小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

843 日本再生のシンボルに 女子W杯優勝の金字塔

画像ドイツで開かれていたW杯の女子サッカーで「なでしこ」日本チームが米国をPK戦の末に破って優勝した。東日本大震災で元気をなくした日本復興の象徴ともいえる快挙だ。眠い目をこすりながらテレビを見た。 延長戦後半、2-2になったあと、終了間際に米国選手の独走を止めるためペナルティーエリア直前で後方からタックルしレッドカードを出された岩清水選手のプレーを見ていて「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」ということわざを思い浮かべた。 このプレーがあったからこそ、米国のリードを阻止して2-2のままPK戦に持ち込み、相手の焦りとゴールキーパー海堀の好プレーで、金メダルを手にしたのだと思う。広辞苑によると、このことわざは身を投げ出す覚悟があってこそ、窮地を脱して物事を成就することができる、という意味だ。まさに、岩清水のプレーはこれに当てはまる。 もちろん、チームを支えたのは主将であり、MVPと得点王に輝いた澤選手である。澤が陽とすれば、岩清水は陰のヒロインといっていい。PK戦直前の両チーム選手の表情が映し出された。米国は緊張した顔しかない。一方、日本側はみんなが笑っている。これはひょっとしたらやるかもしれないと思った。 その通りになった。連続して米国はPKを失敗し、小柄で少女のような顔をした日本チームに苦杯を喫した。澤選手の母親は、9月生まれの娘の「穂希」(ほまれ)という名前について、生まれた年(1978=昭和53年)は(冷夏のため40年ぶりに)コメが不作になったため、次の年からの豊作を祈って稲穂の「穂」と、父親が好きな「希望」の「希」をとったのだという。 震災と原発事故で東北の稲作は危機になっている。しかし、穂希という澤選手の生命力・集中力をもらい、必ず復活するだろう。彼女たちは東日本大震災で元気を失った日本を再生するシンボルになるだろう。表彰式の金色の紙吹雪が舞う中、輝く選手たちの表情を見ながら、そう思った。(写真は岩清水選手、KYODO)