小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1802 グッドニュースとバッドニュース 昨今の話題から

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 昨今、新聞やテレビのニュースになるのは暗い話題がほとんどである。輸出管理の優遇措置を認める「ホワイト国」から韓国を除外したことをめぐる日韓の対立、愛知県での「表現の不自由展」の開催直後の中止、アメリカの相次ぐ銃乱射事件、北朝鮮による飛翔体(短距離ミサイル)発射……など、バッドニュースが占めている。そんな中で、女子ゴルフの全英オープンで優勝した20歳の渋野日向子選手の話題はグッドニュースだった。

「福音」という言葉がある。辞書を引くと「喜ばしい知らせ。うれしい便り」のほかに「キリスト教で、キリストによって人類が救済されるという喜ばしい知らせ。また、それを伝える教え」(大修館書店「明鏡国語辞典」)と出ている。福音はまさにグッドニュースなのである。しかし、2019年8月の世界と日本からは、そうしたうれしい便りはほとんど届かない。  

 きょうは8月6日。テレビでは広島の原爆の日の「平和記念式典」の中継をしていた。会場には外国人の姿が目立つ。小学6年生の男女2人による「平和への誓い」の一節が心に響いた。

《国や文化や歴史、違いはたくさんあるけれど、大切なもの、大切な人を思う気持ちは同じです。みんなの「大切」を守りたい。「ありがとう」や「ごめんね」の言葉で認め合い許し合うこと、寄り添い、助け合うこと、相手を知り、違いを理解しようと努力すること。自分の周りを平和にすることは、私たち子どもにもできることです》  

 経済戦争状態になってしまった日韓関係を見るにつけ、この広島の子どもたちの言葉を互いの政権はかみしめるべきだと思う。愛知の表現の不自由展中止のニュースも、現代世相を象徴するものだ。気に入らないものはやめさせようとする直情径行的考えが脅迫行為にまで及ぶという社会の姿に、危うさを感じる。表現の自由を脅かす政治家の言動が、今回も話題になっている。  

 香港のゼネストのニュースは、グッドニュースなのかバッドニュースなのか……。逃亡犯条例の改正案(中国本土など犯罪人の引き渡し協定を結んでいない国・地域への容疑者の引き渡しを可能にすること)をきっかけに、若者を中心に広がった抗議行動がついに、ゼネストにまで発展した。一国二制度だったはずの香港が次第に中国化していることに対する香港市民の危機感、不満が収まらない。香港市民の抵抗が孤立しないことを願うばかりである。  

 ことしは梅雨明けが遅れ、急に暑くなったためかこのところ熱中症に注意というニュースも目に付く。エアコン、扇風機もない部屋で亡くなった高齢者の体温は40度もあったという報道もある。こう暑いと、来年の東京五輪が心配になってしまうのは私だけではないだろう。五輪の観客、選手が高温で倒れるというバッドニュースは、見たくない。日本人選手として初めて1912(明治45)年のストックホルム五輪のマラソンに出場した金栗四三は、日射病(現在の熱中症)のため途中で意識を失ってしまい完走できなかった。108年後の東京大会のマラソンは、どんな結果になるのだろう。 追記 私の友人はブログ、震災日誌 in 仙台で、広島原爆記念式典の安倍首相あいさつについて、以下のように論評した。残念ながら、私もそう思う。

《この日、広島で行われた平和記念式典で松井一実市長は「(一昨年国連で採択された)核兵器禁止条約に日本政府も署名・批准するよう」求めた。しかし、安倍首相は条約には一切ふれることはなかった。直後の記者会見では、韓国政府批判を繰り返した。74年前の被爆、そして敗戦という冷厳な歴史に目をふさぎ、隣国への敵愾心をあおるこの人物。人種差別、はてはヘイトクライムをあおる米国トランプ大統領のコピーに見えてきた》