小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

210 カワセミとの出会い 師走のやすらぎ

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 宝石のヒスイの由来は、カワセミ翡翠)なのだそうだ。それほどに、野鳥のカワセミは美しい。朝、犬の散歩をしていてこの小鳥を見かけた。散歩コースの一つである遊歩道のわきを流れる小川に沿って、きれいな色をした小鳥が飛んでいた。最近あまり見かけなかったので、一瞬何だろうと思った。そして、カワセミだと気づいた。(写真はWikipediaより)

 この遊歩道は全長約2、3キロしかない。そのわきには小川が流れている。上流では夏には蛍が舞う。蛍のえさになるカワニナが生息している。犬の散歩の途中に、カワセミに出会った私だが、その小鳥はすごいスピードで上流を目指して飛んで行き、視界からすぐに消えた。 私は犬をせかして小川に沿って遊歩道を急ぐ。すると、葉を落とした雑木の枝にカワセミがとまっているのを見つけた。

 私と犬が近付いても飛ぼうとしない。カメラを持ち合わせていないので、目に焼きつかせようとじっくり観察していると、おじいさんと孫と思われる男の子と女の子の3人が犬を連れてやってきた。小学3、4年生と思われる女の子は何と一眼レフのカメラを持っている。 「ここにカワセミがいるよ。そおっと来てごらん」と声を掛けた。3人もカワセミを探していたらしい。「ありがとう」と少女が言い、小学6年生か中学1年生くらいの兄と思われる少年と2人で私の近くにやってきた。

「静かにすれば、逃げないよ」と私。2人は5㍍くらいまで近付き、少女はカメラを少年は携帯のカメラをカワセミに向けた。それを見て私はおじいさんとあいさつしてその場を去った。この話を妻にすると、彼女も見たいと言い出し、夕方再び同じ場所に出向いた。

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 しかし、そこにはカワセミの姿はなかった。「下流の方に行ったのかもしれないな」と話しながら2、3分歩くと何と小川の岩の上に止まっているではないか。今度はカメラを持参した。一眼レフではないのでうまく写らない。何度か挑戦しているうちにカワセミもあきれたのか、飛んで行ってしまった。ところが、さらに下流に歩いていくと、別のカワセミがのんびりと羽根を休ませているのが目に入った。

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 東京の町田市や日野市、神奈川県藤沢市など、都会の市が市の鳥に選んでいるのだから、そう珍しい鳥ではないようだ。宮沢賢治の「やまなし」という短編童話にはカワセミが魚を殺生する場面もある。そういえば、私の目の前でカワセミは小川にくちばしを突っ込み、何かをくわえていた。小川に生息する魚を食べたのだろう。美しい小鳥でも生存のためには、殺生をする。それが自然界の摂理なのだ。

(写真は予想通り、うまく写っていなかった。 これは後日撮影した梅の木に止まったカワセミ

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