小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1214 南米の旅―ハチドリ紀行(3) 悪魔ののど笛にて・ささやきにおびえる

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「悪魔ののど笛」と聞いて、人はどんなことを想像するだろう。のど笛は、首ののど仏のあたりを言うが、悪魔と付くからには、やはり不気味さが伴う。そんな場所がイグアスの滝のアルゼンチン側にあり、現地を見て合点がいった。だれが付けたかは知らないが、うまいネーミングである。

 これまでいろいろな世界遺産を見た。16の湖からなるクロアチアのプリトヴィッツェ湖の滝は、繊細な美しさがあった。迫力という点での圧巻はイグアスではないか。イグアスの滝パラグアイ、ブラジル、アルゼンチンの3国の国境にまたがる巨大なものである。イグアス川にある大小300の滝の総称であり、滝幅は4キロにわたるという。悪魔ののど笛は、アルゼンチン側で最大の見どころ・ハイライトといわれ、最大落差80メートル以上から轟音とともに流れ落ちる滝の姿をから、こう呼ばれているのだそうだ。

 ボートに乗って、滝しぶきを浴びたあと、トロッコ列車に乗り、悪魔ののど笛駅で下車し、遊歩道を歩いて滝に次第に近づいていく。昨年6月下旬、大雨のためイグアス流域が増水し、川にかかる遊歩道(橋)が損傷、約1ヵ月通行止めになり、ここの観光も中止になったという。修復された遊歩道を歩いていると、昨年損傷した橋の部分が一部そのまま残っている。

 世界各地で続いている異常気象は南米も例外ではなく、自然の牙はこうした観光地にも容赦なく襲い掛かることを示している。 現在は雨季末期。増水した悪魔ののど笛は水が茶色に濁り、下の方は白いしぶきで何も見えない。しかし風がなくしぶきはかかってこない。恐ろしいまでの滝音は、悪魔のささやきのようにも聞こえ、滝壺に引き込まれるのではないとかさえ錯覚する。

 同行の一人に齋藤寛康さんという、多くの滝を訪れている人がいた。自身のホームページも持っており、今回の旅についてもアップする予定だという。齋藤さんは、イグアスについてどんな感想を記すのだろう。 アルゼンチン側の国立公園入口付近には、「シェラトン・イグアス リゾート&スパ」というホテルがあった。ガイドによると、来年夏まで予約でいっぱいだそうだ。

 幹線道路からイグアスに入る道はシェラトングループによってきれいに舗装されたのだという。しかし国立公園に入ると、道はでこぼこだった。アルゼンチン政府が金を出さないからだと、ブラジルに住むガイド(父親がドイツ人、母親が日本人)は説明していたが、真偽のほどは分からない。

 イグアス地域はパラグアイ、ブラジル、アルゼンチンの3国の国境地帯にあり、3国はかつてウルグアイとの関係をめぐって「三国同盟戦争」(1862-1870)を戦い、この戦争に負けたパラグアイは国力が衰退、現在もブラジル、アルゼンチンに比較すると国としての勢いは弱い。

 国境地帯はイグアスの川で区切られ、アルゼンチン側には「3国の国旗掲揚塔」があり、3国のカラーを現す石碑が建っていた。戦争から140年以上の時を経て、3国の関係は現在良好だが、ブラジル、アルゼンチンがサッカーの強豪国であるのに対し、パラグアイはその下に甘んじ、ことしのワールドカップ・ブラジル大会も予選敗退し、出場できない。(次回はパラグアイに住む日本人の話)

 

4回目はコチラから

齋藤さんのHPはこちらから

写真 1、悪魔ののど笛といわれるアルゼンチン側の滝 2、滝近くまで寄る観光用のボート 3、4、遊歩道には珍しい蝶が 5、アルゼンチン国境から見たパラグアイ方向

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