小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1325 思い浮かべる漢字は「遠」 旅、選挙、大震災……

画像 庭から出ると遊歩道がある。その植え込みの中から、一本だけ背が高くなった水仙の花が咲いた。自然の生命力が、悪条件を乗り越えて花を咲かせたようだ。

 正岡子規水仙の僅に咲て年くれぬ」明治30年)という俳句をつくっている。きょうは23日だから、ことしも残り8日しかない。そんな年の暮れに、ことしの私自身を漢字一字に当てはめて振り返ると「遠」を思い浮かべるのだ。

 日本漢字検定協会がその年の世相を表す漢字を公募し、今年は「税」と決まったと先日発表された。消費税が5%から8%に上がったことを反映したわけで、あまりいい印象ではない。では私自身が考えた「遠」は、どんな意味があるのだろう。

 ことし3月、旅行で南米を初めて訪れた。日本から往復で4万キロ、行き帰りで飛行機を10回乗り継ぐというきついスケジュールだった。文字通り、「遠い旅」を経験した。しかし、「遠い道のり」を経て行き着いた先には「イグアスの滝」、「マチュピチュ」、「ナスカの地上絵」があり、その景観をいまも時々思い出す。マユピチュでは遺構を案内するように、美しい蝶が舞っているのに遭遇した。

 衆議院が唐突に解散され、12月14日に総選挙があった。発表になった投票率は52・32%で戦後最低だった。棄権した有権者にとって選挙は「遠い存在」なのだろう。政治不信、無関心がこのような結果に至ったのだろうが、だれかが喜んでいるのではないだろうか。

 東日本大震災から3年9カ月が過ぎた。昨今は被災地のことはあまり報道されず、あの大震災は政治家にとっては「遠い過去」になってしまった感がある。しかし依然として復興は進まず、原発事故の避難者たちの苦難はいまも続いていることを直視しなければならない。大震災は過去の出来事ではなく、現在進行形の問題なのである。

 ことしのノーベル物理学賞は、青色LEDの発明と量産化に貢献した赤崎勇・名城大学教授(85)、天野浩・名古屋大学教授(54)、中村修二・米カリフォルニア大学教授(60)の3人が受賞した。少ないエネルギーで効率のいい照明をもたらすもので、青色LEDは「21世紀の照明」といわれる。今、照明の中心はもちろんLEDである。だが、かつて日本にも「ほの暗い時代」を求める動きがあったのも事実である。

 それは「遠い昔」の話ではなかった。いつごろのことなのだろう。この話は次回に。 画像 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南米の旅―ハチドリ紀行(1) 4万キロ、10回の飛行機乗り継ぎ

南米の旅―ハチドリ紀行(2) 大いなる水イグアスの滝

南米の旅―ハチドリ紀行(3) 悪魔ののど笛にて・ささやきにおびえる

南米の旅―ハチドリ紀行(4) パラグアイ移民として50年

南米の旅―ハチドリ紀行(5) 天空の城を蝶が飛ぶ

南米の旅―ハチドリ紀行(6) あれがナスカの地上絵?

南米の旅―ハチドリ紀行(7) 都市の風景=歴史のたたずまいに触れる

南米の旅―ハチドリ紀行(8) 胸を突かれた言葉

南米の旅―ハチドリ紀行(9) 自然の宝庫・蝶の話

南米の旅―ハチドリ紀行(10)完 アマゾンに伝わる言い伝えから