小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

989 ジョン万次郎とともに 土佐清水にて

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 江戸末期から明治時代に波乱万丈の生涯を送ったジョン万次郎は、高知では有名人だ。生まれ故郷にある「ジョン万次郎資料館」をのぞいて、人間はどんな逆境にあっても不屈の精神を持てば生き残ることができると感じ、大きな力を得た。

 寒村の貧しい漁師の次男として生まれた万次郎は歴史に名を残す人物になった。前々回で書いたように、高知には文学者が多い。一方で坂本龍馬や万次郎のような激しい生涯を送った人物もいる。

 宮尾登美子は土佐の人を言う「土佐っぽ」について、「土佐の人間というのは飛びつきやすい、飽きやすい、燃え上がりやすい、冷めやすい。一方で、粘り強さ、根気よさがその底にある」と語っている。

 万次郎は漁に出て遭難、漂着した無人島の鳥島で5人の仲間と143日間の過酷な生活をし、通りかかったアメリカの捕鯨船に助けられ、米本土に渡る。オックスフォードなどで英語や数学、測量、造船を学んだ万次郎は10年後日本に帰国、英語の通訳や開成学校(東大の前身)などの教師としての生涯を送る。粘り強さと根気よさを生かして、過酷な運命を生き延びたのだろう。
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 資料館がある土佐清水市は、足摺岬で知られる観光の街だ。足摺岬には、アメリカを向いた万次郎の銅像もある。同じ時代に生きた坂本龍馬に比べると知名度は低いが、その人生の輝きは龍馬に引けを取らない。

 万次郎の生涯に感銘を受けたが、ひるがえって日本の現実を考えると悲観的にならざるを得ない事象が相次いでいる。 消費税(増税は公約にはなかったと離党する議員が跡を絶たない)、原発(活断曾に対する電力会社と保安院のずさんさ、意見聴取会で電力会社の幹部や社員に発言させるというおかしな運営ぶり)、オスプレー(配備自体は米国政府の方針だ。

 どうしろ、こうしろという話ではないと責任を放棄したどじょう首相)、そして大津のいじめ問題だ。これに取り組む野田政権は朝令暮改と無定見を繰り返し、政治不信を増幅させている。この政権は何をやっているのかといらだつのは私だけではあるまい。 土佐くろしお鉄道で中村から高知に戻る途中、土佐の青い海に向かって、日本の将来の安寧を祈りたい気持ちになった。