小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

972 菜の花に誘われて 北海道滝川にて

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 北海道滝川市は「菜の花畑」の街といわれる。耕作面積は180ヘクタールに及び、市内ではいま、黄色い花が満開だ。この街に行く機会があり、偶然ながら素晴らしい菜の花畑を見ることができた。滝川を走る幹線道路(国道12号)から少し入った農道には、菜の花見物の車が列をつくっていた。

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「兎追いし 彼の山 小鮒釣りし 彼の川 夢は今も巡りて 忘れ難き故郷」で知られる唱歌「故郷」と同じ高野辰之が作詞、岡野貞一が作曲した「朧月夜」の一番は「菜の花畠に 入日薄れ、見わたす山の端 霞み深し 春風そよふく 空を見れば 夕月かかりて 匂い淡し」と、菜の花畑の夕景色を詠っている。

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 滝川の菜の花畑近くを通ったのは正午過ぎのことで、朧月夜の風景とは違い、陽光の下、これが原色の黄色だと思えるじゅうたん畑が輝くばかりだった。滝川では菜の花を観光・緑肥、菜種油用に栽培しているのだそうだ。6月初めには「菜の花まつり」が開かれる予定で、かなりの観光客が菜の花目当てにやってくるという。

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 この花が咲く道を通って、丘へと登っていくと、「丸加高原」がある。滝川を訪問した目的は、この高原にできた小児がんをはじめとする難病の子どもたちを受け入れるキャンプ施設「そらぷちキッズキャンプ」の中に完成した宿泊棟「星のコテージ」を見ることだった。

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 丸加高原は、滝川の街を見下ろし、背後には暑寒別連峰がまだ白い雪を抱いているのが見える。高原には、緑色の草にまじって黄色の花があった。菜の花の種が飛んで、自然に育ったものも一部にはあるが、ほとんどはタンポポなのだろうか。

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 滝川に向かうため、羽田から飛行機で旭川に行き、バスに乗り換え市内へと向かった。途中、道の両側には八重桜が満開だった。桜は列島を南から北へと開花リレーを続け、ゴール地点が近付いている。それを待つかのように、北海道の夏が一気にやってくるのだ。

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