小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

946 北京の旅(3) 厭わない深夜労働、サイドビジネス

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 中国は、いまも共産党による「一党独裁体制」が続いている。天安門にはその象徴として毛沢東の巨大な写真が飾られている。文化大革命によって国内を10年間にわたって混乱させた毛だが、共産党の独裁体制が続く限り、毛は特別な存在として扱われるのだろうか。

 しかし、力を誇示した重慶市薄熙来氏が中国共産党委員会書記を解任されるなど、共産党幹部の腐敗に対する国民の目は厳しくなっている。今度の旅で接した一人も吐き捨てるように、共産党はだめだと強調していた。 彼によれば、共産党幹部は腐敗し切っていてひどい状態だという。共産党嫌いを公言する彼は、首相を務める温家宝氏を口をきわめて罵り、多くの幹部がわいろをとり、その金で子どもや家族を米国、カナダなどに移住させ、自身も定年後には素早く中国を離れるケースが少なくないと語るのだ。

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 コネやわいろが横行する時代を嘆く彼だが、仕事の面ではそうした慣行をちゃっかり利用している。万里の長城には駐車場が多く、長城に近い上の方から埋まっていく。早い時間に到着すれば、車から降りて歩く距離が短くて済むのだが、時間によってはかなり歩かされることになる。

 だが、彼は「上の方の駐車場の担当者と知り合いだから大丈夫」と胸を張った。その通りで昼食後の到着にもかかわらず、一番上の駐車場には私たちが乗った車1台分の空きがあった。普段から、駐車場の担当者(国家公務員)とは酒を飲み、マージャンもして、わざと負けてやるのだそうだ。

 こんな話も聞いた。あるブランドメーカーの下請けに勤務する人たちは、ブランド商品に使う材料の1割しか検査でOKを出さず、不合格になった9割を持ち帰り、その材料でブランドと全く同じ商品を作る。しかし、それを市場に出せば逮捕されてしまうので、ひそかに口コミで中国駐在の外交官に販売しているというのだ。

 昼は別の仕事をして夜には印章彫のアルバイトをして日本人観光客に売って財をなし、ベンツを乗り回しているという人の話も聞いた。これなどはあまり珍しくはなく、多くの人がサイドビジネスをやっており、ガイドの男性もクッキーや甘栗の販売、印章の仲介と忙しそうだ。

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 中国は世界の工場と言われて久しい。いま全世界に普及している米国・アップルのiphoneの端末もフォックスコンという台湾に本社があるメーカーが生産しているが、中国国内では広東省・深圳市(しんせんし)など9つの都市に13工場を抱え、54万人が働いているという。

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 そのうち従業員8万人のある工場の話。アップルから夜中に指示があって、急に工場を稼働する必要があった。その工場では30分後にはラインを動かしたという。多くの従業員が地方から大都市に出稼ぎにやってきていて、工場の寄宿舎暮らしをしているため、夜中でもこんなに早くラインの稼働ができたのだという。

 従業員は割増しの賃金がもらえると、割り切って深夜でも仕事を厭わないのだ。発展を続ける中国ではこうした話題は尽きず、多くの悲喜劇が毎日続いているという。

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写真 1、天壇公園で暇つぶしをする老人たち 2、花嫁はどこへ行く 3、観光用の人力車はいまも人気だ 4、北京動物園のパンダ舎まえの煉瓦壁には子どもたちの絵が 5、同じ北京動物園の池の周囲は、カメラを構えた人たちでいっぱいだった