小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

801 あきれる身内意識  東電は甘くない?

  東日本大震災から1カ月が過ぎた。だが、福島第一原発の事故の収束の見通しは立たず、評価が最悪の事故といわれたチェルノブイリ事故と同じレベル7に引き上げられるという。そんな中で身内意識もここまでくると、呆れてしまう発言が報道された。

  経団連米倉弘昌会長が東日本大震災福島第一原発に関して米国ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに答え、経団連の認識を語っている。その内容がお粗末なのだ。

  米倉氏は今回の原発事故について、インタビューの中でこう答えている。

 「東電自体が被災者だ。従業員が津波に流され、機器も津波に流されているところがある。そういったなかで一生懸命努力をしている。政府としては、東電が最 大限努力しやすいような環境を作るべきだと思っている」

 (東電は甘かったのではないかとの質問に)「甘かったということは絶対にない。要するにあれは国の安全基準というのがあって、それに基づき設計されているはずだ。恐らく、それよりも何十倍の安全ファクターを入れてやっている。東電は全然、甘くはない」

  原発の動向を世界が注視している中で、経団連の副会長も務める東電の清水正孝社長は体調を崩して入院、最悪の危機の中で、指揮官がいなくなった。71歳の勝俣恒久会長が代わりに指揮を執っているが、失礼ながら大丈夫かと不安になる。

  そんな東電に対し「東電自体が被災者だ」という認識はどうか。経団連の副会長である清水社長をかばったのかもしれないが、これでは原発事故で長期避難を余儀なくされている人たちから怒りの声が出てもおかしくはない。

  東電の事故後の対応は後手後手で、あまりにもお粗末だったことはだれでも承知している事実だ。原発の安全対策は「止める」(緊急停止)「冷やす」(炉心の過熱を抑える)「閉じ込める」(放射性物質が漏れ出さないようにする)の三つに尽きるという。 しかし、緊急停止はできても、もう二つは実行できなかった。当初「想定外」という言葉を繰り返した東電に批判が集まったのは当然だ。レベル7という最悪の事故は、東電の危機管理の甘さと現政権の指導力不足による人災といっていい。

  だが、米倉氏に言わせれば、想定外の自然災害なのだから、こうした事態は仕方がないということなのだろう。退院後久しぶりに公の場所に姿を見せた清水社長は、福島県庁に行き佐藤知事に面会を求めたが、門前払いになった。知事が福島県民の怒りを代弁したといっていい。そんな激しい怒りを米倉氏は感じていないのだろうか。