小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

793 「東電に裏切られた」 避難民の悲痛な声

 マグニチュード9・0という巨大地震が起きた2011年3月11日午後2時46分は世界の歴史に刻まれることだろう。

  あれからきょう(19日)で8日目だ。昨夜のテレビやきょうの新聞では、被災地では地震発生時刻に犠牲者に対し黙とうをしたという報道があった。黙とうする人たちの手は真っ黒に汚れたままだった。避難所には水は足りないし、被災者たちは手を洗う余裕さえないのだ。

  東電福島第一原発の30キロ以内に住む住民たちが町を続々と離れている。双葉町は町を挙げて、さいたま市の埼玉アリーナに避難した。避難してきた老人は「東電に裏切られた」とテレビのインタビューに答えていた。

 「裏切られた」とは、どんなことなのか。東電のホームページには原子力・おたずねに答えて」というコーナーがあり、Q&Aもある。この中で、「老朽化が心配だが、安全対策は大丈夫か」や地震対策の「新潟中越地震の際の放射性物質放出の影響」「津波は大丈夫か」という3点が気になった。このページなので興味がある方はぜひ読んでみてほしい。

  特に津波に対しては以下のような記述がある。

  原子力発電所津波評価においては、「安全設計審査指針」、「原子力発電所津波評価技術(土木学会)」の考えに基づき、敷 地周辺で過去に発生した津波はもとより、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーション解析により評価し、重要施設の 安全性を確認しています。具体的には、数値シミュレーション解析により求まった津波の最高水位に満潮時の水位を加えた水位においても、重要な施設の運転に支障のないこと、また、 津波の最低水位から干潮時の水位を差し引いた水位においても原子炉の冷却に支障のないことを確認しています。

  ここでいう「過去最大」の津波とはいつを指すのか分からないし、具体的な数字の裏付けがないので「原子炉の冷却に支障がないことを確認している」といっても、説得力はない。

  かつて原発に対する反対の声に対し、電力会社(政府も含めて)側は二重、三重の安全対策をしているので、災害が発生しても大きな事故にはならないと安全性を強調していた。それに対し「安全を強調するなら人口過密の首都圏に原発を設置してもいいのではないか」という論争があったことを記憶している。

  そして、今回の原発事故は津波によって引き起こされた。「想定外の津波だった」という東電側の言い分もあるが、それでは避難所暮らしを強いられ、いつ元の生活に戻ることができるのか、全く見通しの立たない避難民を説得することはできまい。原発政策を推進してきた歴代政権も同様に重大な責任がある。原発によって便利さを享受してきた私たち国民も重い課題を突き付けられたといっていい。