小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

754 復活したしなやかな浅田真央の演技 爽快なフィギュアの若者たち

画像 フィギュアスケート浅田真央全日本選手権で復活し、世界選手権への出場することが決まった。 今シーズン、ジャンプが決まらず、不調が続いていただけに、この復活はフィギュアファンには、うれしいことだろう。ショートでトップに立ったものの安藤美姫にフリーで逆転され2位になったが、「優雅さ」という面ではやはり際立っていた。

 浅田は今回の全日本を「ラストチャンス」という表現を使って、再起を誓った。その通りに不調を克服したのだから、やはり天才なのだろう。スポーツ選手にとって「栄光と挫折」は紙一重だ。これまで栄光の道を歩み続けた浅田は、今シーズンは挫折ともいえる試合結果しか残らなかった。

 全日本でも好成績が残せなかったら、精神的ダメージは大きかったはずだ。 そうした精神的な不安を抱えつつ、2日間を乗り越えたのだから、世界選手権ではさらに彼女らしい演技を見せてくれるのではないか。今回優勝した安藤の切れのある演技と若さにあふれる村上佳菜子の滑りは爽快だった。

 浅田は昨シーズンも不調が続いたが、途中から復調してバンクーバー五輪ではキムヨナに敗れはしたものの銀メダルに輝いているのでラストチャンスに強い何かを持っているのだろう。 浅田の復活を見ていて、全く別のスポーツで世界の頂点に立った2人の選手を思った。

 女子マラソン高橋尚子野口みずきだ。高橋はシドニー(2000年)、野口はアテネ(2004年)でそれぞれ金メダルを獲得した。 高橋はその後もベルリンマラソンで2年連続優勝し、東京国際マラソンでも一度優勝した。しかしこの後は優勝することができずに、現役を引退した。

 一方、野口もベルリンマラソンや東京国際マラソンで優勝し、2008年の北京五輪の代表にも選ばれた。しかし北京は故障で欠場し、その後の駅伝では芳しい成績は残していない。 2人ともオリンピックという最大の舞台で、圧倒的強さで優勝を飾りながら2度目の五輪での活躍という夢は果たせなかった。

 この2人に比較すると浅田は年齢的に若く(最初のチャンスは年齢制限で果たせなかったが)次の五輪(ロシアのソチで開催)に2回目の出場をする可能性は高いだろう。今シーズン経験した「どん底」は決して無駄にはならないはずだ。しなやかで見る人を魅了させる演技を磨け続ければ、再び五輪の舞台で脚光を浴びるだろうと思う。