小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

641 完全試合を失っても 親近感を持つガララーガ投手

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 こんな人がいたら友人に持ちたいと思う。大リーグで、完全試合(27人を連続してアウトにして、塁に出さないことだ)だったはずなのに、誤審で幻になってしまったタイガースのガララーガ投手である。

  2日のインディアンスとの試合で、彼は9回2アウトまで取り、あと一人で完全試合の達成だった。27人目のバッターは、一塁ゴロで、一塁手が取り、ベースカバーに入ったガララーガ投手にボールを投げる。だれが見てもアウトのはずだった。しかし、判定はセーフで、監督の抗議も受け入れられず、完全試合は幻になったのだ。

  この判定をした一塁審判のジョイス審判は、試合後ビデオを見て自分のミスで、完全試合を台無しにしてしまったと、ガララーガ投手に謝った。これに対し、ガララーガ投手は「完全な人間はいない」と、ジョイス審判をかばった。翌日の試合前にもガララーガ投手はジョイス審判のもとに歩み寄り、握手を交わした。審判の方は涙を流し続けたという。

  2006年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でも、日本―米国戦で、3塁走者西岡を置いて、岩村がレフトフライを打ち、西岡がタッチアップ後ゆうゆうとホームインした。これに対し、二塁審判はタッチアップ(離塁)が早いとして西岡はアウトと判定、日本はこれがきっかけでこの試合に敗れた。明らかに「誤審」だったが、この審判は自分の非を認めなかった。彼は多くの誤審で札付きの審判員だった。

  それと比べると、ジョイス審判は正直だ。それよりもガララーガ投手の寛大さは気に入った。内心ではらわたが煮えかえるくらい悔しく、怒り心頭だったはずだ。そんな思いを抑えたのだから、人間的にもすごい投手だと思う。フェアプレー精神を持った彼は人を裏切ることはしないだろうし、こんな彼に好感を持つ人は多い違いない。

  スポーツはさわやかだ。その対極にあるのが政界だ。鳩山由紀夫首相は8カ月しか持たず、副総理の菅直人財務相が後任の首相になった。これまでは民主党の最大の実力者、小沢一郎氏に近いといわれたが、代表選びでは「小沢さんにはしばらく静かにしていただいた方が本人のためにも、民主党のためにも日本のためにもいい」と、脱小沢の姿勢を明確にした。

  一方、対抗馬の樽床伸二氏は、かつては小沢氏とは一線を画していたはずが、今回は小沢グループにすり寄った。元官房長官野中広務氏は、小沢氏について「平気で人を裏切る人」とテレビ番組で話していた。菅氏がこんな小沢氏を切ったのは正しい判断だろう。

  いま、日本の政界は相変わらず、政党間の足の引っ張り合い、裏切りの連鎖が日常化している。そんな政治の実情を見ていると、余計にララーガ投手のさわやかさに親近感を持つのだ。