小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

639 どうせなら、夢を求めたい 映画「RAILWAYS」

画像 「夢」という言葉は、3つの意味があると広辞苑にある。「睡眠中に見る幻覚」次に「はかない、頼み難いもののたとえ」、そして「空想的な願望」―である。「将来の夢は」という言葉は3つ目に該当する。 その「夢をかなえる」ことは、現実にはなかなか困難だ。

 この映画はそれをかなえた男の話だが、この映画を地で行く人がいるのである。 映画は、大会社の役員への昇進を約束された男が、故郷の島根で一人暮らしをする母親の入院、親友の死をきっかけに島根に戻り、子どものころの夢だった電車の運転士になる―という話である。

 中井貴一主演の「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」は、実際の話かどうか分からない。島根・宍道湖畔を走る通称「ばた電」こと一畑電車 を題材したこの映画を見ながら、いすみ鉄道の運転士募集の話を思い出した。

 千葉県を走るいすみ鉄道は、3月14日のブログで紹介したように、訓練費700万円を採用時に自己負担すれば、列車の運転免許を取得できるという運転 士養成プランを発表した。「子どものころの夢をお金を出してかなえてください」というわけだが、これに対しけっこう応募者があり、最終的に4人が合格し、現在運転士としての訓練を受けているそうだ。

 鳥塚亮いすみ鉄道社長のブログによると、鳥塚社長と訓練生たちは29日に丸の内ピカデリーの封切りに招待され、上映後中井らの舞台挨拶の際に、突然「いま運転士の訓練で話題のいすみ鉄道の皆様がお越しです」と紹介され、観客席で立ち上がった鳥塚さんや運転士の卵をスポットライトで照らし出すシーンがあったそうだ。

 運転士候補の4人は千葉、東京、埼玉、広島出身で、40代から50代。応募時はいずれもが会社員で、訓練費は貯金などを工面して納入したと新聞に出ていた。 人生は1回しかないのは自明の理である。とすれば、やりたいことがあれば、やればいいのだが、それができないのも人間なのである。それを4人はやってのけた。

 人間には「可能性」があるのだと思う。 話は映画からいすみ鉄道に飛んでしまった。映画に戻る。どこにでもあるような話だ。しかし実は仕事や家庭、故郷、その他もろもろのことをこの映画は描いているのだ。自分の好きなことで生活を送ることの大切さをこの作品は伝えているのだが、それは好きな映画を仕事にした監督からの「一度の人生なのですから、思うように生きてください」というメッセージなのかもしれない。