小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

620 派閥抗争は崩壊の始まり トヨタ、そして富士通

 米国を中心に逆風が吹いているトヨタで、創業家の豊田家と非創業家メンバー幹部の間で派閥抗争が起きているというニュースが流れている。企業は言うに及ばず、どんな世界でも派閥が発生する。それは一人では生きることができない人間の性なのかもしれない。世界有数の企業に成長したトヨタの内部抗争は起きるべくして起きたといっていい。

  トヨタの今日があるのは、非創業家メンバーの手腕によるところが大きいことはだれもが認めるところだろう。しかし「出る杭は打たれる」とはよく言ったもので、米国を中心にその品質に問題が提起された。

  それに対し、創業家で現在の豊田章男社長らは「高い成長率や厚いマージンと引き換えに品質を犠牲にした非創業家メンバーの社長らによって弱体化した企業を引き継いだ」(ウォール・ストリート・ジャーナル)と主張しているようだ。

  非創業家メンバーで、トヨタの成長を担ってきた人たちにすれば「何をいまさら」という思いに違いない。日本の戦後政治を長い間担当した自民党は「派閥政治」を繰り返した。それでも長い間、政権を担った。

  時を経て、ついに自民党は政権を民主党に明け渡した。民主党には目立った派閥がないのかその動きはよく分からない。それよりも、小沢一郎幹事長の「独裁」という見方が繰り返しメディアで報じられている。

  組織を弱体化させるのは、派閥抗争である。藤沢周平の「秘すれば花」をはじめとする一連の作品にあるように、江戸時代、派閥抗争のため「お家断絶」に追い込まれた名門は少なくない。

  いずれにしろ、トヨタ社内の動きは危ういといわざるを得ない。トヨタの派閥抗争という話が事実なら、それは崩壊につながる危険な芽といっていい。元社長の辞任問題で大揺れの富士通にも同じことが言える。既に崩壊し、税金によって再建の道を歩んでいるて日航は、その典型だ。それをトヨタ富士通も肝に銘じるべきだ。