小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

410 山手線の異様な光景 警察が広告ジャック

 ある日の朝、山手線に乗って驚いた。頭が変になったのかと思った。全部の車両が警察のPRで占められていたからだ。まるで、電車ジャックのように思えた。何しろ車両の外も中も警察関係のシールやポスターが占拠し、映像のディスプレーまでが警察紹介なのだ。

 団塊世代の大量定年退職時代を迎え、警視庁の人材採用活動の一環なのだそうだ。しかし異様な光景であり、息が詰まる思いがした。怪訝な顔をした乗客も多かった。

  新聞やテレビの報道によると、この試みは3月2日から山手線の1編成(11両)のすべての広告を警視庁が独占し、16日まで続くというから、宣伝効果は大きいかもしれない。外にはSP(要人警護)や白バイ隊員、警察犬などのシールが張られ、車内には警視庁の現役警察官をモデルに使ったという37種類、1700枚のポスターが掲示されている。

  乗降口上の画面には新人警察官の仕事ぶりの紹介、振り込め詐欺のクイズなどが映しだされていた。予算は4600万円というからさすが警視庁だ。3月の予算消化時期としてはうまい使い方ではある。

 「安心・安全な街づくりを進めるという警視庁の思いを伝え、警察官という職業は大変やりがいのある魅力的な職業ということを知っていただきたい」というのが、この電車作戦のコメントだ。

  現代は宣伝の時代だ。だから警視庁も思い切った手を打ったのだろうと推測する。しかし、ここまでやる必要があるかと疑問に思う。現場の警察官の多くは地道に仕事に取り組んでおり、こんな宣伝は必要がないはずだ。

  警視庁として最も効果がある宣伝方法は、難事件の早期解決だと思うのだが……。ちなみに、知人の息子さんは警視庁と地方の県警を受験し、両方とも合格したが、地元の県警を選んだ。警察官志望者は、決して少なくはない。