小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

363 紅葉の山陰・山陽を歩く 浜田・因島にて

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 旅することをなりわいにしているわけではない。しかし、長い人生を送っていると、訪れた地域もかなりになる。しかしなぜか島根県には縁がなかった。今回この未知の土地に足を踏み入れた。 そこは紅葉の盛りだった。次いで広島へと移動し、因島に渡った。ここも澄んだ空気の中で木々の葉が赤く染まり、日本の晩秋を味わうことができた。

 島根を訪れたことで未訪問の地域は47都道府県中2県だけになった。周囲には全都道府県を踏破した人も少なくない。残りの3県が自然に恵まれた地域だけに、いつかは訪れてみたいという思いが募る。 島根県小泉八雲が松江に住んだことで有名だ。放映中のNHK・朝の連続ドラマ「だんだん」も松江が舞台の一つだが、私の目的地はこの街ではなかった。松江は鳥取県寄りにある。

 今回訪れたのは浜田市で、どちらかといえば山口県に近い地域だ。 出雲市から乗った特急を降り、浜田市中心部から車で40分ほどの旭地区に行く。冬は雪がかなり積もるという高台で車を降りると、冷気が体に伝わってくる。そこには、盲導犬センターや近いうちに収容人員が2000人になる社会復帰促進センターという名前の新しい刑務所があった。

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 この刑務所では来年4月から盲導犬センターと協力して、受刑者が生後2ヵ月の子犬を10ヵ月間育てるパピーウォーカープログラムが始まる。愛情を持って盲導犬の候補犬を育て、信頼される喜びや達成感を得てもらおうというのが狙いだそうだ。 民間資金を活用したPFI方式の刑務所としての新しい試みであり、社会から隔絶された壁の中で受刑者が純真な子犬たちに接し、穏やかな心を取り戻すことを願うばかりだ。

 浜田から高速バスに乗り、広島に向かう途中、山々が紅葉に包まれているのに目を奪われた。次の目的地は因島だった。しまなみ海道は昨年伯方島大三島を訪れたときにも利用した。因島はかんきつ類のハッサクと造船の島だ。

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 造船不況を乗り越え、現在は島の造船会社は海外から修理の注文が相次ぎ、その予約は10年先まで埋まっていると聞いた。そこには、途上国の人たちがかなり働いている。昔から海と船を生活に拠点にしたこの島は、伯方島と同様、船にかかわる技術力が伝統なのだろう。

 今回の旅の結果、全国で44都道府県を踏破し、残るは鳥取、大分、宮崎の3県になった。それぞれが個性的な地域であり、これまでなぜ訪問しなかったのか、自分でも不思議に思う。それぞれの街で、後輩たちが暮らしている。地図を見ながら、彼らの顔を思い浮かべた。