小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1178 街中のスタバで憩う タイへの旅(6)

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 私はあまりショッピングに興味がない。そのために、一緒に旅行に行った家族がショッピングにいそしんでいる間は喫茶店で本を読むことが多い。今回のタイ旅行でも訪れたチェンマイバンコクの2つの都市で喫茶店にお世話になった。もちろん、両都市にはグローバル展開のコーヒーチェーン店・スターバックスがあり、読書をしつつ疲れた体を休めながら、客の生態を観察することができた。

 スターバックスは、1971年に米国・シアトルで開業、現在は日本を含む43カ国・地域で営業しているという。チェンマイで私は2階の奥の窓際に座り、コーヒーをすすりながら持参した文庫本の小説を読み始めた。隣には学生らしい3人の男女(男2人、女1人)がいて、小さな声で会話を交わし、レポート用紙に何かを書き続けていた。途中に入ってきた男子の2人がいきなり携帯電話をかけて、何やら話し出したが、それが終わると静かになった。私は本を読み、コーヒーを味わい、そして居眠りをしながら2時間余を過ごし、ショッピングを終えた家族と合流した。

 私が店を出る時も3人は何かを書き続けていた。何時間、居座っているのか分からないが、ひた向きさを感じ、心が和んだ バンコクでは、私は2つに区切られた店の窓のない奥に陣取った。隣にはチェンマイと同じように学生らしい男女がいて、1人は本を読み、1人はレポート用紙に何かを書いている。外気(28度くらいか)に比べると、店の中の温度は低く、私は家族が置いて行ったスカーフを首に巻き、文庫本を読み続ける。隣の女性はシャツの上に、カーディガンのようなものを羽織っている。

 1時間ほどして、居眠りをしようとしていると日本語が聞こえてきた。甲高い声も交じっている。「デモはひどくなったね。きょうも何人か死んだようだな」という、タイの政治情勢の話が耳に入り、眠気は吹き飛んだ。話が聞こえるテーブルには日本人(らしい)5人が座っていた。「品物の納期が遅れ、店の開店が遅れてしまった。どうすべきか」という相談のようだ。当初は、納期を守らなかった側が弁解をしていて、そのことに批判が集中した。しかし、途中から、終わったことをいまさらほじくりだしても仕方がない、という声で、今後どう展開したらいいかという方向に話は進んでいく。こうして2時間半が過ぎた。

 この日は、日曜日だった。私の隣の学生は懸命にレポート作成と読書をしていて、その近くでは日本人が声高に商売の話をしている。のんびりと文庫本の小説を読んでいるのは、私だけだ。このころ、外では反政権派の黄色いシャツを着た人たちが笛を吹きながらデモを続けている。 「遠山に日の当りたる枯野かな」(高浜虚子)。日本のいまごろから1月にかけては、こんな印象を受ける風景を目にする。熱帯のタイにはない風景だが、バンコク・スタバの一角でなぜかこの句を思い浮かべた。エアコンが効きすぎて、体が日本の気候を思い出し、それが頭にも伝染したのかもしれない。

 

写真 1、アユタヤのバンパイン宮殿、東洋と西洋が同居している印象 2、チェンマイで見かけたブーゲンビリアのような花をつけた大木 3、チェンマイ市内にある少数民族の染色と織物の店 4、少数民族の染色と織物の店の代表のイギリス人女性、犬がよくなじんでいる

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7回目へと続く