小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

963 チャーミングな桃の畑が・・・ 原発事故1年後の福島の春

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 桃の産地として知られる福島県北の伊達市で、桃が開花したというメールが知人から届いた。甘い香りが漂ってくるような、美しい写真が添付されていた。

「天下無敵」「チャーミング」(魅力的)「私はあなたのとりこ」など、桃の花言葉はいろいろあるが、やはり「チャーミング」が似合うと思う。だが、それは自然界を脅かす「魔の手」がないという前提なのだ。美しい写真とともに、原発事故という魔の手によってこの世の春を奪われた畑の姿も写っていた。画像

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 冒頭に、桃源郷とも思える写真を紹介する。これらの写真を見る限り、原発事故の影はない。だが、以前のブログで紹介したように、この地方では放射性物質汚染され、昨年桃や柿の出荷ができなくなった農家が相次いだ。冬には除染のため高圧洗浄機で柿の幹の表皮をはがし、桃の木を伐採してしまった畑が目についたそうだ。この写真を多くの人に見てほしいと思う。特に、政治家や官僚は必見ではないか。

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 写真を撮影した知人の思いを以下に記す。

「私は、毎日、このピーチラインを通って通勤しています。農家の人々の思いを考えるだけで、せつなくなります。柿の木は、粗皮を剥いだり削ったりした方がよい樹木ですが、桃はそれができない樹木だそうです。桃の根はそれほど深くなく、表土を剥ぎとることもできないため、このまま、夏の収穫を待ち、その結果によって出荷停止、出荷自粛など・・・農家の人々にとっては、身を切られる思いでの農作業の日々となっているのです」

「農耕民族である日本人にとっては、田んぼや畑は、ご先祖様から受け継いだ大切なもの。その土地を守り、肥やして、土地からの恵みで生きてきた大切なものです。BSの放送大学のある講義では、日本人にはその遺伝子の中に土地を育て、土地を大切にする遺伝子情報が入っているのではないかと言っていました。その土地が放射能という物質で覆われ、まさに「放射能に奪われた桃源郷」となってしまっているのです」

 知人のこの言葉は、原発事故の福島で生きる人々に共通する思いではないか。8枚目の農家の人は、どんなことを考えながら摘花の作業をしているのだろう。

 以下写真説明。 1、桃の里(桃源郷)の遠景 2、桃の花のトンネル 3、チャーミングな桃の花 4、国道4号線、桑折町からの入り口にある看板。ピーチラインは、桑折町にある入り口から約4キロ阿武隈川に沿って、伊達崎(だんざき)橋まで続く。 5、桃畑に入ると表皮を剥がれた柿の木、後ろには清掃センターがあり、それらとともに桃の花ははかなく、美しく咲き乱れている。 6、桃の木がすべて伐採され、ビニールなどと一緒に、ゴミ捨て場のように放置された桃畑もある。 7、放置され、山積みされた枝。伊達地区も月舘町霊山町のようにホットスポットがある。伐採、剪定した樹木、枝をピーチラインにある清掃センターへ持参しても、受け付けてもらえず、すべて持ち帰らなければならない。そのため、伐採した桃の木も、短く切られ、畑の隅に積み上げられてある。 8、摘花に励む農家の人