小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

888 バンコク水害の深刻度  簡単ではない自然との共生

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 いま、街が洪水に浸かってしまったタイのバンコクに1度だけだが行ったことがある。家族の1人に猛烈なタイファンがいるので、そんなにいいところなのかと思いながら同行したのだった。(焼畑農業の現地) 数日間の滞在で、バンコクチェンマイ周辺、映画の「戦場にかける橋」で有名になったクワイ川(クウェー川)など、訪れた場所は多くない。

 しかしタイの人々の柔らかな笑顔に触れて、心が和む時間を送った。そのタイがいま危機にある。 首都・バンコクチャオプラヤ川沿いの標高2メートルの湿地に運河を巡らし造られた都市(海抜マイナスのところもあるそうだ)といわれ、これまでも雨期になると、大雨によってしばしば洪水に見舞われた。 運河沿いには洪水対策の壁もできたが、チャオプラヤ川の水面の高さは海抜2・2―2・3メートルに達しているというから、雨が多いことしはバンコクの街が洪水に襲われても不思議ではない。

 各種情報によると、インドシナ半島では経済の成長によって森林伐採が激しく行われ、依然、焼畑農業も続いている。しかしこれらの跡地への植林が実施されずに「はげ山」が増え続けており、熱帯雨林の減少が森の貯水力激減、洪水発生へとつながったのではないかという見方が有力だ。

 さらに上流にある2つのダムの放水が遅れ、満水になってから放水したため下流で洪水が発生したというのだ。このほか遊水地が宅地になり、ダムや運河の浚渫作業が行われずに土砂がたまって貯水量が落ちたなどの「複合的要因」も指摘されている。

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          (ちょっとした雨でもこんな光景に)

 バンコクの市民が今回の水害について日本のメディアから深刻度を聞かれ「50%程度」と答えたことには驚いた。この人は予想より水位が低く、大水には慣れているので、こう答えたというが、楽観的だなと思った。物事は悲観的に見るよりも楽観的に見た方が体にはいいのだが、日本人ならもっと高い数字になるはずだ。

 民族性の違いなのだろうか。しかし、この報道を見ていた家族は「私たちも楽観主義だよ」と話していた。タイを何度も訪問しているうち、その特性を身に付けたのだろうか。 タイの水害のニュースに続き、数日前にはアメリ東海岸の大雪のニュースがあった。

 日本では3月に東日本大震災が起きた。こうした事象を見ているとこの地球は生きているのであり、人間と自然の共生はそう簡単ではない。