小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

857 エコについて 北欧じゃがいも紀行・2

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 コペンハーゲンデンマークの首都)の道路には車道の脇に自転車専用道がある。通勤通学の3分の1の人たちは自転車を利用しているといわれるだけに、なるほど自転車族の姿が目につく。郊外に出ると、田園風景の中に風力発電用の「風車」があった。北欧はエコの国でもあるのだ。

原子爆弾開発の理論を研究した物理学者はデンマーク人ですが、この国は原発がなく、自然エネルギーで電力を賄っています」と、コペンハーゲン在住40年というガイドの女性が語った。 ノーベル物理学賞の受賞者であるニールス・ボーアのことだろう。彼は量子力学の分野を確立、相対性理論アインシュタインと並び称せられる理論物理学者だ。デンマークの500クローネ紙幣に彼の肖像画が使われており、日本の千円札の野口英世と同様、この国では英雄的な存在なのだ。

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 では、なぜデンマーク脱原発なのか。NGOの活動を中心に議論を重ね、国民的合意を経て風力発電を中心にした今日の脱原発国に至っていることは周知の通りだ。 この国にはフォルケホイスコーレ(民衆高等学校)という生涯教育機関が100校あり、原子力利用の問題の議論でも、重要な役割を果たしたといわれている。

 福島原発の深刻な事故を受けて、日本も原発問題について国民的な議論が求められているはずだが、その動きは鈍い。首相を含め、政界で目立ってきた松下政経塾出身者が、この議論をリードしようという動きも見られない。

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 デンマークの隣のスウェーデンには、「エコタウン」といわれる地区があるのを知った。首都ストックホルムから数キロ南のハンマルビー・ショースタッド地区で、ストックホルムが2004年の五輪誘致をした際、選手村として利用する計画だった。だが、この年の五輪はギリシャアテネと決まり、誘致に失敗したことから、水道やゴミ処理、交通、電力など、エネルギー全般をエコに徹した街づくりに変更になった。

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        (ごみはここから地下へと集められる)

 すべて集合住宅で現在の人口は2万6千人。2年後の2013年に計画が完了する予定だ。住民は路面電車やバス、自転車を利用して通勤し、自家用車を持つ人は少ない。 東京の多摩ニュータウンに比べたら、規模は小さい。だが、街並みの美しさといい、空間の広さといい、エコを取り入れた生活の居心地は格段にいいと思う。赤ちゃんと散歩中だった若い女性は「移ってきたよかった」と話していた。透明感のある街を歩いて、日本にもこのような街づくりが必要だと痛感した。

(追記 名古屋市の中心部でことし6月25日から自転車専用道が開通した。広い車道の脇を専用道にし、歩道とは区別している。広い道路だからこそできたものだろうが、将来は全国に拡大したらと期待する)

 さて、今回もジャガイモについて触れる。子どものころ、夏のおやつに小さなジャガイモを油で揚げたものをよく食べた。懐かしい味でだが、今回の北欧の旅で、こうした小さなジャガイモの料理は出てこなかった。