小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

619 ことしの春は 花戦争の季節に思う

画像 ことしはわが家の庭の「カイドウ」の花の付きがよかった。桜の花よりも先につぼみが膨らんだが、満開になったのは少し遅く、桜が散ってもこちらの方はまだ花が残っている。 この花の華やかさは、春の庭にはうれしいものだ。かつて「この花を私と思って大事にして」と、奥さんに言い残して地方都市に転勤した友人がいた。あれから、もう20年近くの歳月が過ぎた。

 友人宅の庭のカイドウは大きく成長し、近所の人たちの目を楽しませているはずだ。 カイドウは、中国の歴史上の美人、楊貴妃にたとえられる。彼女は玄宗皇帝のお后だったが、ほろ酔い機嫌で寝た楊貴妃を皇帝が呼んだら、眠そうな顔で現れた。

 その顔を見て皇帝は「海棠の眠り未だ足らず」とカイドウの花にたとえたのだという。その由来から中国ではカイドウのことを「眠り花」と言うそうだ。それほど、楊貴妃は妖艶だったのだろう。

 この花は中国原産である。中国だけでなく外国から日本に伝わった動植物は少なくない。日本を経由して外国に渡ったものもある。昨年スペイン・ポルトガルを旅した際、アルハンブラ宮殿を訪れた。 現地のガイドは宮殿の庭園に植えてあるボケの花を指して「ハポン」と呼ばれていると説明した。

 フランシスコ・ザビエルが1549年に初めて日本の地を踏んだ後に、日本からこの花が伝来したために、スペイン語で日本を意味する「ハポン」と名付けられたと彼は説明した。眉つばかもしれないし、案外本当かもしれないと思った。

 わが家の庭には少ないながらチューリップが咲いている。千葉の佐倉で(印旛沼のほとりにある佐倉ふるさと広場)オランダのチューリップの畑のような(オランダ自体は写真やテレビでしか見たことはないが)、139種、50万本のチューリップが群生しているのを見ることができる。幕末の老中、堀田正睦蘭学を奨励しており、1989年から毎年チューリップ祭りを開いているのだ。

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「花戦争」という言葉があるとしたら、いまの季節が当てはまる。次々に花々が開花し、その美しさを競うからだ。もう1月もすると、北海道はもっとその様相を濃くする。厳しい冬を過ごした植物たちが春を謳歌しようと、一斉に開花を迎えるのだ。 しかし、ことしの4月は天候が不順で、寒暖の差が激しい。きょうもコートを着て外出した。「暖かな春」は、どうなったのか。