小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

600 敗者の美しさ 終わった浅田真央のバンクーバー五輪

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 あまりに多くのメディアで話題になっているので、このブログでは触れることもないと思った。バンクーバー冬季五輪の女子フィギュアの浅田真央のことだ。でも、やはり触れることにする。 宿命のライバルといわれる韓国のキム・ヨナに破れ、銀メダルに終わった浅田は、銀メダルにもかかわらず、悔し涙を見せた。安定感抜群のキム・ヨナトリプルアクセルという大技で挑んだが、それ以外のジャンプで失敗した。

 その姿は痛ましいが、私には力尽きた「敗者の美」を感じた。 キム・ヨナと浅田の闘いは、まさに「ライバル物語」といえる。その結果については、ここで書くまでもない。(これまでのフィギュア人生で)前半は浅田がリードし、中盤の現在はキム・ヨナが優勢だ。

 この2人が4年後のロシアのソチ五輪に出場するか(あるいはできるか)どうかは分からない。もし出場すれば、再び名勝負を展開するのではないかと想像する。 今度の冬季五輪で日本選手はあまり活躍していない。残念ながらまだ金メダルはない。それに対し、キム・ヨナの韓国は素晴らしい成績を収めている。人口は約4800万人で、日本の半分にも行かない。

 しかし、スポーツでは韓国の方が優勢だ。それだけではなく、産業界でも韓国企業の躍進はめざましい。 自動車、家電は日本の企業もたじたじだ。世界のSONYも韓国のサムスンに追い越されてしまった。 キム・ヨナと浅田の滑りを見ていて、かつての日本と韓国の関係を考えた。日本は余裕があるが、韓国は必死に日本の後を追う。

 2人の表情は、その逆だった。キム・ヨナはゆったりとして浅田の方は無我夢中に見えた。浅田の姿勢にひたむきさを感じ取った。 試合が終わって、浅田は日本のテレビ局にひっぱりだこだという。この五輪の華が浅田であることは衆目の一致するところであり、試合から一定の時間を経た後の感想も聞いてみたいとは思う。

 しかし、極限まで精神と肉体を駆使した選手を何度も引っ張り出すのは酷というものだ。 浅田と安藤は疲れがピークに達し、明日のエキシビションの練習に参加しなかったという。それは、日本のテレビ局が集中豪雨的に浅田ら女子フィギュア選手を追い回したかを物語っている。

 4年後のソチ五輪に2人が出場すれば、世界が注目する闘いを見ることができるのだが、どうなるか。出場すれば金メダル確実といわれたトリノ五輪は年齢制限で出場できず、初の五輪でキム・ヨナに負けた浅田が悲運の選手に終わってほしくないと思うのは私だけではないだろう。