小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

541 私のDNAは 究極の個人情報を保管

画像いま話題のDNA(デオキシリボ核酸)を採取し、保管を依頼した。 1990年5月に栃木県足利市内のパチンコ店の駐車場から4歳の女児が行方不明になり、翌朝、近くの渡良瀬川の河川敷で遺体となって発見された事件で、有罪判決を受けて服役していた菅家利和さんのDNAと遺留物のDNAが一致しないという再鑑定結果が出て、釈放されたのはつい最近のことだ。そのDNAはどのように採取するのか。 大災害やテロなど、思わぬ事故、事件で多くの命が奪われた際、個人を特定するのは難しい場合が少なくない。米国の同時多発テロ9・11では、身元の確認作業が困難を極めたという。それだけ、遺体の損傷が激しかったわけだが、一番身元確認に力を発揮したのは、歯型の照合よりも保存されたDNAと、遺体から採取したDNAの照合だったという。とはいえ、照合する元のDNAがなければ、そうした作業はできない。(犯罪捜査では事件現場に残された血痕と容疑者の血痕が鑑定で合致すれば有力な材料になる9 そうしたDNA採取・保存を愛知県歯科医師会がやっている。東京のNPOが職員を対象に採取・保存をするというので、たまたま訪れた私も便乗した。申込書に住所や名前、生年月日などの必要事項を書き、免許証のコピーと写真を出し、歯科医師がアプリケーターという柔らかいスプーンのような用具を口の中に入れ、左右の頬の部分をぬぐってサンプルを採取し、それを保管するのだ。 愛知県歯科医師会は、採取したDNAを6年間保存するそうだ。その間に、採取を受けた個人が身元が特定しにくい事故などに遭った際は、遺族からの依頼で保存しているDNAと遺体からのDNAを照合すれば、個人が特定できるのだ。その確率は4兆7000億人に1人という精度だという。 海外では9・11以降、無差別の自爆テロが続発しており、そうした危険地域に行かなければならない人にとっては、DNAの保存が必要な時代になっている。日本は個人情報保護法制定以来、個人情報の過剰保護時代になっており、このDNAも「究極の個人情報」だといわれる。それにしても、自分の分身が一定時期にしても保管されるというのは、何となくこそばい思いだ。(写真は、養老渓谷。記事内容と無関係です)