小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

497 ああ借金674万円

  財務省の発表によると、国の借金はついに860兆を超えたという。国民1人あたりでは674万円というから、気の遠くなるような金額だ。今月末総選挙が行われるが、こんな巨額の借金を前に、政治家たちは自分の責任をどう考えているのだろう。

  たまたまインターネットで財務省の「日本の財政を考える」という資料集を見た。この中は「国民生活と財政の関係」「国の家計簿の現状は」「国の借金の状況は」「今後の財政は」「現状を放っておくと何がこまるの」「財政健全化のために」という項目がたてられ、財政のイロハがよく分かる。

  財務省発表をもう少し詳しく書くと、国債や借入金などを合計した「国の借金」が、6月末の時点で860兆2557億円になり、前回公表した3月末時点に比べ13兆7587億円の増加で、経済対策に伴う国債増発が最大の要因だという。新聞によると、7月1日時点の推計総人口(1億2761万人)から算出すると、国民1人当たりの借金額は約674万円になり、3月末から3カ月間で約10万円も増加した計算だ。

  ここで財務省の資料に戻る。「現状を放っておくと何がこまる」には、こう書いてある。「借金増大で政策に使われる経費が圧迫され、国の経済全体に大きなマイナスの影響を及ぼし、公債(国債)発行による借金は将来世代への負担の先送りにほかならない」と。分かっちゃいるけどやめられないのが国債発表だと麻生さんは言いたいはずだ。

  さらに「財政健全化のためには」の中には「子や孫の世代に負担を先送りしない持続可能な財政の構築に向け、2011年度までに国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目標にしている」と目標をしっかりと書いている。しかし、昨年夏からの世界同時不況で、政府は次々に景気浮揚策のためにと、財政支出を繰り返し、目標は絵に描いた餅となり、このような巨額の借金の山になった。「100年に1度の経済危機なんですから」という、麻生さんの言葉がまたも聞こえてきた。

  今月末の総選挙を前に、各党は政権公約マニフェスト)を発表した。しかし自民党民主党も選挙目当てとしか言いようがない「ばらまき公約」のオンパレードだ。国の借金がこんな状態になっているというのに、マニフェストからは深刻さは全く伝わってこない。

  日本の政治家は「楽天家」ばかりで、借金の怖さを知らないのだろうかとさえ思う。政治を支えるはずの財務省をはじめとする官僚たちは「先送り体質」なのだから、ここまで来てしまったといえよう。借金1000兆(地方も入れればもう達しているが)という悪夢のような数字だけは見たくはないし、到達阻止は最大の政治課題として、新しい議員たちは取り組んでほしいと思う。