小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

463 スポーツ選手の光と影 松坂に「燃え尽き症候群」を連想

 スポーツは結果が一番評価される。5200万ドル(約61億円)の巨額の契約金で大リーグ・レッドソックスに入って3年目の松坂大輔の様子がおかしい。きょう現在で1勝5敗、防御率は何と8点台まで下降してしまった。不調を通り越している。

  ファンの容赦ないブーイングにさらされても仕方がないようだ。日本が優勝した3月の第2回WBCでは3勝を上げて、最優秀選手に選ばれただけに現在の松坂の姿はだれも予想はしなかったと思う。WBC後遺症という声もある。

  たしかに松坂だけでなく、WBCに参加した日本選手多くが今シーズン不調に苦しんでいる。天才イチローでさえ、当初体調不良が続き、復帰まで時間がかかった。3月といえば、調整の時期である。その時期に一気にトップギアに入れた結果、その後で不調に苦しむことになったといえる。

  ダルビッシュや田中は若さでそれを乗り越えたが、松坂も安打製造機といわれるヤクルトの青木らも不調に苦しんでいる。スポーツに(人生もそうだが)光と影は付き物だ。WBCで連覇した松坂自身、まさかこんな不調に苦しむとは考えなかっただろう。

  世の中は栄枯衰退の繰り返しとはいえ、松坂の不調は見ていて気の毒に思う。体調管理をきちんとやるのもプロ選手の仕事なのだが、このままでは次回のWBCへの参加を拒否する選手が相次ぐかもしれない。

  かつて「燃え尽き症候群」という言葉があった。ウィキペディアWikipedia)によると、一つのことに没頭していた人が慢性的で絶え間ないストレスが持続すると、意欲を無くし、社会的に機能しなくなってしまう症状で一種の外因性うつ病ともいえるのだという。

  日本では大きなスポーツ大会(オリンピック、甲子園の高校野球全国高校サッカー選手権など)の後のスポーツ選手の心理状態についても使われる。深刻な精神状態というよりも、部活動を引退する高校3年生、オリンピックや世界大会を終えた日本代表選手などが「それまでの人生最大の目標を終え、打ち込む物が何もなくなった」と虚脱感に襲われるケースだ。

 とすれば、松坂の乱調もこれに当てはまるのではないか。イチローは、休養という手段でそれを克服したが、松坂は今後どう立て直すのだろう。

  いま、日本社会は11年連続して自殺者が年間3万人を超える「ダーク社会」だ。社会全体がこの「燃え尽き症候群」症状に覆われている印象が強いのだ。それだけに、庶民に夢を与える松坂のような存在が落ち込むのは、限りなく寂しい。彼の奮起を期待するのは私だけではないだろう。