小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

340 人生の不思議な縁 2つの出会い

  長い人生を送っていると、不思議としかいいようがない出会いがある。先月、中欧の旅で偶然に出会った人が、8月の芝居公演の最終日に同じ時間帯にこの芝居を見ていたことが分かった。

  こんなことは、まれにはあるかもしれない。しかし、きょう私が経験したことはそうはあるまいと思う。夕方、ある会合の流れで酒席に8人が集まった。たまたま隣に座った女性と話をした。これまでは全く会話をしたことはなかった。話をしているうちに、彼女の知る人と私の後輩が同一人物と分かった。そんなことがあるのかと、2人は不思議に思った。

  私は思い切り、携帯電話を取り、後輩の番号に掛けてみた。彼女は結婚しているので、旧姓を聞いて、「いま○○さんと一緒にいる」といってみた。彼が理解するまでは少し時間がかかったが、○○さんを思い出したのか「彼女は私のマドンナでした」という返事が帰ってきた。

  ○○さんによると、後輩とは高校時代一緒だったが、卒業後は全く会う機会がなく、39年の歳月が流れたのだそうだ。携帯電話を彼女に渡し、2人は話していたが、お互いの昔を思い出すには声だけでは容易ではなかったようだ。しかし、話し合っているうちにお互いの少年、少女時代が甦ってきたようだ。話し終えた彼女の顔は高揚しているように見えた。

  本当に偶然の話である。「世間は狭い」とか「人生の縁」とかいうが、偶然の出会いがけっこう面白い。家にこもっていたら、このような出会いはない。酒席は彼女の話で盛りあがったことはいうまでもない。