小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

320 8月(12) 雷の季節に hanaのつぶやき

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 人間の世界では、昔から怖いもののたとえとして「地震、雷、火事、親父」ということわざがあるそうです。私はそのうちいくつかは経験しているのですが、最近では何といっても「雷」が怖くてなりません。

 昨日も午後から急にすごい雨が降り、ゴロゴロ、ピカリという一番いやなものが目と耳に飛び込んできたのです。すると、私の体はどうしようもないくらい、がたがたと震え出しました。そう、私は雷が大の苦手なのです。

  雷だけではありません。大きな音を出す花火やいたずらな子どもたちがやっている爆竹も嫌いです。突然、大きな音がすると、私はどこかへと逃げたくなるのです。この前、散歩の途中に出会ったかわいいキャバリアは、雷が鳴ると「ワンワン」とほえて、雷に立ち向かっていくと飼い主のおじさんが言ってました。小さくても強いんだなあと感心しました。

  私は犬の種類では「ゴールデンレトリーバー」といわれていて、大型犬の仲間です。自分で言うのも変ですが、体が大きくとも気持ちは優しいのです。私は6歳になりました。人間で言えば40歳というそうですから、けっこうなおばさんなのです。

  でも、家ではいつもまだ小さな女の子の扱い方をされています。みんな私のことを呼ぶときは、まるで幼稚園か小学生の子どもに話すみたいな言い方をするのです。名前は「hana」なのですが、「はーちゃん」とか「はな君」とか「ハナハナハナ」とか、まあその場の雰囲気で適当に言うのです。

  雷が鳴ります。私は震えて落ち着かなくなります。ママは「はーちゃん、おいで」と声を掛けてくれます。でも、私は震えている姿をだれにも見られたくないので、どこかに隠れたいのです。お父さんも、一応は同情するような顔をして強引に私を抱きかかえたりするのですが、余計に落ち着かなくなってしまい、迷惑なのです。

  2人のお姉さんのうち、上のお姉さんはけっこう突き放したように見ていて、知らんふりをしています。それに対し、下のお姉さんはべたべたに優しく、私の背中を静かにマッサージしてくれたりします。

  この家の序列がどんな風なのかはよく分かりません。一番散歩に付き合ってくれるのはお父さんですが、家の中ではママの方が威張っているようです。お父さんに対し子どもに言うように、いつも文句や注意をしています。それに対し、お父さんはあまりしゃべらず「うん」とか「はい」とか答えています。

  だから怖い者の4番目にある「親父」は、私の家では全く怖くはないのです。だけど、実はママはお父さんにはけっこういろんなことを報告しています。この前も、私が雷が怖くて、オシッコをちょっと漏らすと、それをすぐにメールで知らせてしまいました。お父さんは帰ってくると、すぐに私の頭をなでながら「失敗したのか」といいながら、笑っていたので、ああまたメールをしたなと分かったのです。

  暑い暑いといっていましたら、8月ももう終わりです。私たち犬族の時間の流れはとても速いのですが、ことしの8月は気が遠くなるほど長いと感じました。そして、この雷とすごい雨なのだから、この地球はどうなっているのかと思いました。

  お父さんの話では小さいころは「夕立」という言葉がよく分かるほど、夏休みには毎日のように夕方近くに雷がなり、雨が「ザー」と短い時間に降ったそうです。すると、暑さがやわらいで夜は涼しく蚊帳の中で寝ることができたようです。でも、いまの雷と大雨は、昔の夕立とは感じが違うとお父さんは言います。

  今夜も雷が鳴り、強い雨が降っています。私はママと下のお姉さんがおしゃべりをしているのを聞きながら、リビングのソファーに丸くなっています。実は少し震えているのですが、オシッコを漏らさないように我慢をしています。お父さんは私をおいてきぼりにして部屋にこもって、本を読んでいるようです。

  繰り返しますが、8月も終わりです。ついでに雷も終わってほしいなあ。それにしても、ことしは台風がまだあまり来ていませんね。9月は台風の季節というそうですが、私は雨の中の散歩が大嫌いなので、台風もできるだけ日本を避けてほしいと思います。