小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1286 hana物語(27) つぶやき5

画像「車は最高 hanaのつぶやき」 

人間の世界ではゴールデンウイークという休みの連続する日々が終わりました。この間、いつもならママと昼の時間を送っている私ですが、「お父」やお姉さんたちが家にいることが多く、私にとっては休日ではありませんでした。

いつもなら、みんなを送り出したあと、私はママの掃除の前に昼寝の時間に入ります。おなかがいっぱいで、とても眠くなるからです。ところが、ここのところはそうした時間にみんなの相手をするので、寝るどころではなかったのです。

ところで、私は車に乗るのが大好きです。休みの間は「お父」とママは出かける度に私を連れて行ってくれました。ですから、よけい昼寝ができなかったのです。でも、いまの季節が私は大好きなのです。いろいろな花が次々に咲くからです。

ドイツスズランという花が庭にあります。日本のスズランの花は白いはずです。でも、これは薄いピンク色をしています。去年、短いヨーロッパ旅行をした「お父」は、ドイツの景色が気に入ったらしく、ホームセンターでこの花を見つけると、すぐに買い求めました。でも、去年は花が咲かなかったのです。初めて割いたピンクの可憐な花に「お父」は感動した様子で、うれしそうな顔でこの花を見ていました。

私の散歩コースの一部に仲間のゴールデンレトリーバーを何匹も飼っている家があり、そこにはブッラクベリーがたくさんあります。お姉さんたちがここのゴールデンたちに吠えられながら足を止めてこの花を見つめているのを「お父」から聞いたママが買ってきて、わが家の庭の一員になりました。それに咲いたのですが、お姉さんたちは、もう興味を示しません。

家族で笠間の焼き物市にも行きました。その帰り笠間稲荷で咲いていた藤の花もよく覚えています。八重の珍しい大木です。あそこには一重の藤もあってその眺めは素晴らしいものでした。多くの参拝者が写真を撮るのは当然だと思いました。

私の遊び場の庭にはキンモクセイもあり、この枝にセッコクという花が飾ってあります。白い花ですが、一部に薄いピンクの花が混じっています。横浜の、「お父」のお姉さんの家に遊びに一緒に行くと、ここにはこの花がたくさんありました。

 

人間は、本当に花が好きなようです。それは私にも分かります。庭に出たママは花の手入れをするときは生き生きしています。「お父」も自分の好きな花が咲くとカメラを取り出して、写し始めます。その季節がいまなのです。

 それにしても、人間の休日は私には休日ではありません。内緒ですが、連休が終わる明日からが私とママの休日なのです。(2007・5)

「hanaにはブドウは禁物 私の日記から」 

珍しく、休みの娘から帰りにhanaを連れて駅まで迎えに行くという連絡があった。暑いから、散歩は少し涼しくなってからにしたので、ちょうど帰りに待ち合わせることができるというのだった。

電車を降りて、待ち合わせ場所に行くとhanaが飛びついてきた。娘は「散歩の途中、歩くのをいやがったの。ほら、お父(おとう)が帰ってくるよというと、歩き出したんだ」と言う。帰りに遊歩道を歩いた。

すると、hanaは途中でかがみこんで排泄をした。それは軟らかいものだった。健康ならば、固い文字通りコロコロ状態に近いものを排泄するのだ。

朝の排泄物もやわらかかったと娘は言う。梅雨に入り、涼しい日が続いた。しかし、このところ雨がなく、蒸し暑い。hanaにはこれがこたえたのかもしれないと思った。

体調を崩したhanaに夕方のえさも控えた。水だけは与えたが、飲んでしばらくして気持ちが悪いと訴えるかのように、うろうろ歩きまわる。そして、飲んだ水を全部吐き出した。

何か悪い物を口に入れてしまったのだろうか。でも、家族には心当たりはない。家族が慌てて動物病院に電話をする。診察時間は8時までだ。あと数分しかない。無理を承知で頼み込み、動物病院に駆け込んだ。

 hanaは病院が嫌いらしく、待合室に入っただけで震え出す。診察室に入り、1メートル近い高さの診察台に乗せようとすると、震えながらしり込みする。27,8キロの巨体を抱きかかえて診察台に乗せなければならないのだ。この日もそうだった。

医者の問診。「そういえば、前日ブドウを食べさせました」と答える。「前にはミニトマトを食べさせ、体調不良になったことがありましたね。この子(犬)はデリケートなんですよ。食べ物には気をつけてください」と医者。注射を2本射ってもらい、消化のいい缶詰を薬代わりに受け取った。

hanaは野菜や果物が大好きなのだ。彼女を溺愛する家人は、ついついこうしたものを食べさせてしまう。つられて私も同様の行為をする。犬にとっては、まずいことなのだが、ついやってしまう。

今回、憂鬱な日々を送らせた体調不良の原因は、実は私たちがつくってしまったのかもしれない。私たち3人が焦った時間には、hanaが一番言うことを聞く長女は不在だった。一日が過ぎ、ハナの体調は戻ったようだ。夜、郵便ポストまで行く私に彼女はうれしそうに尾を振りながら付き合ってくれたのである。(2007・6)