小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

201 藤田恵美の世界 歌唱力と最高の音質

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 藤田恵美という平凡な名前を聞いて、どんな女性を思い浮かべるだろうろうか。実は、藤田は以前、ヒット曲を歌い、NHKの紅白にも出場した有名歌手だったのだ。 それは後で触れる。最近、藤田の「camomile Best Audio」というCDが発売された。

 その音質の素晴らしさと、藤田の透明感あふれる歌は久しぶりに音楽を聴く楽しみを思い出させてくれたので、ついブログに書きたくなったのだ。 藤田は、このCDの解説で「私が歌っていて楽しめるタイプの曲は、間の多い歌です。言葉と言葉のあいだに何もなくて、そこにどれだけ意識を残しておくか、行間を歌うか…語尾の部分も聴こえなくなるところまでめいっぱい意識を置けるか…そんな事ができる歌が面白い」と書いている。

 17曲すべてが英語で歌っているものの、解説のように、行間のあるゆったりとした藤田の歌は、心に染み入るのだ。 実は、このCDが注目されたのは、もちろん藤田の歌唱力の水準の高さもあるが、ハイブッリトCDといわれ、新しいCDプレーヤーで再生すると、藤田が目の前で歌っているように聴こえることも大きな要因だ。

 私の貧弱なCDプレーヤーではそれは無理だと思って試聴してみると、意外や意外なのである。CMに近い音が私の耳にも入ってきたのだ。 ビートルズの「All My Loving」や映画「オズの魔法使い」のテーマ曲「Over the Rainbow」「What Wonderful World」などポピュラーな曲も含まれ、この曲はどこかで聴いたなと懐かしい思いに浸ることができるだろう。それがこのCDだと思う。

 さて、種明かしだが、藤田は90年代に「日だまりの詩」というヒット曲を出したあの元ル・クプルの女性ボーカリストなのである。NHK紅白に出場しながら、この1曲でル・クプルの全盛期をすぎたが、ソロ歌手藤田恵美としての彼女は、その歌唱力で香港や台湾、韓国、マレーシア、シンガポールなどアジア各国でも通用する歌手に成長したという。挫折を経て甦ったその原動力は、歌が好きだということに尽きるのだはないか。このCDを聴くと藤田の歌への思いが伝わってくるのだ。