小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1610 ある小さな音楽交流会 クリスマスイブの名盤鑑賞

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 音楽の世界には老若男女の差別はない。クラシックが好きなひともいれば、ポピュラー音楽を聴くのを楽しみにしている人もいる。幅広い音楽の世界を味わおうと、レコードを中心に音楽鑑賞をしているグループがあり、私も初めて参加した。24日午後のひと時である。この日は、クリスマスイブ。参加者はクリスマス特集の名盤に聞き入った。

 千葉県市原市の石川英明さんが個人で主宰する「レコード交流会」という催しである。6年前から月1回のペースで開いている交流会は、今回で66回目になる。元警察官の石川さんは現職時代から音楽鑑賞が趣味で、クラシックを中心にLPレコードやCDを集め続けた。その数はそれぞれ600枚ずつ、合計で1200枚になる。そんな石川さんに対し、知人の女性がこんなことを話したというのである。

「年寄りだというと、聴かせる音楽は童謡か演歌だと思っている人が多い。でも私は、クラシックの3大テナー(ルチアーノ・パヴァロッティプラシド・ドミンゴホセ・カレーラス)の歌やタンゴを聴きたいと思うの」。これを聞いた石川さんは、自分の集めたレコード、CDを活用すれば、彼女の希望にこたえることができると友人、知人らに声を掛け、レコード(CD)鑑賞を通じての交流会を始めた。  

 プレーヤー、スピーカー、アンプも石川さんが持ち寄り、それぞれの曲の説明も自身でやる。その説明は軽妙で面白い。最近の交流会会場は市原市の姉崎健康福祉センター(アネッサ)の会議室で、24日は午後1時半から約30人(男女半数ずつで、平均年齢は?歳)が参加した。一人300円のお茶代を払ってお茶とお菓子をいただきながら、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」(ユージン・オーマンディ指揮、フィラデルフィア管弦楽団)、アメリカのオルガニスト、ヴァージル・フォックスのG線上のアリアといった名盤を聴いたあとは、ホワイトクリスマスをはじめとするポピュラーなクリスマスソングが次々に掛けられた。

 プラシド・ドミンゴマライア・キャリービング・クロスビーイル・ディーヴォパット・ブーンジョン・レノン、ザ・プラターズ、ミレイユ・マチュー(シャンソン)といった往年の歌手から現在も活躍中の歌手まで石川さんが持参したレコード、CDは豊富だった。参加者は歌手の名前を当てるクイズに挑みながら2時間半、名曲に聴き入った。  

 レコード交流会に使われるレコードの分野は広く、今回のようなクリスマス曲中心の会もあれば、「テナー歌手特集」「オペラ名曲集」「映画音楽特集」「夏のハワイアン特集」「スペイン、フランス、ポルトガル音楽旅行」「秋のジャズボーカル」(いずれも今年開催)などと多彩である。次回の来年1月28日は、筝(琴)特集で、沢井忠夫(尺八演奏家)・一恵(琴演奏家)夫妻、山本邦山(人間国宝の尺八演奏家)、ジョン・海山・ネプチューンアメリカ人尺八演奏家)らが演奏する名盤を掛ける予定という。  

 この時期、日本ではベートーベンの交響曲9番の演奏会が多い。石川さんの交流会の参加者も行っているだろう。作詞家で作家のなかにし礼さんは、第9は「リンゴの歌」「青い山脈」とともに戦後の日本人の心を支えた3つの歌の一つだと思っている、と『音楽への恋文』(共同通信社)の中で書いている。石川さんほか、この日の参加者の人生を支えた3つの歌はどんなものだっただろう。この日掛けられた曲にもそれが含まれているのかもしれない。

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