小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1060 最低の投票率と世界最高齢に思う 時代を象徴する数字

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数字のことを書く。一つは16日に投開票された衆院選小選挙区)の投票率が1996年の59・65%を下回る59・32%と戦後最低を記録したこと。もう一つは、世界最高齢といわれた115歳の米国の女性が亡くなり、京都府京丹後市在住で115歳の木村次郎右衛門さんが世界最高齢に認定されたことである。前者は政治不信(あるいは無関心)、後者は日本の高齢化社会をそれぞれ象徴する数字で、考えさせられたからだ。 ここであらためて書くまでもなく、選挙は自民党が圧勝し、政権与党の民主党はどこかに吹き飛んでしまったかのようだ。小選挙区制の怖さだという解説が多いが、野田首相は国民の「嫌民主党」という空気を読めなかったに違いない。それにしても、投票率の低さはどうとらえるべきか。政治不信がここまで来てしまったのかという思いでテレビを見ていたら、投票に行かなかったという人たちが、口をそろえるように「政治に興味がないから」とインタビューに答えていた。 投票率を上げるには、大学やコンビニで投票させればいいという、変わった「提案」も出ていたが、何か勘違いをしているのではないか。選挙権は憲法で保障された国民の権利であり、棄権をするというのは、その権利を放棄したことにつながるからだ。 総務省の発表によると、今回の選挙の当日有権者数は1億395万9866人(私もこの中の1人に入る)で、投票したのは6166万9473人だった。残りの4229万393人(40・68%)が棄権したことになる。昨年3月の東日本大震災でその行動に海外から注目を集めた日本人だが、今度は「日本人は投げやりになった」と思われるのではないか。 世界最高齢に認定された木村さんは、1897年(明治30)4月19日生まれだそうだ。木村さんより8カ月後の12月26日に誕生した大久保琴さん(神奈川県川崎市在住)も女性の世界最長寿者となり、男女全体でも木村さんに次いで世界第2位だ。この結果、男女とも世界最高齢は日本人となり、それはそれでめでたいことだと思う。 かつて、鹿児島県徳之島に泉重千代さんという有名な老人がいた。黒砂糖からつくったという焼酎のお湯割りを好み、1976年には120歳になったとしてギネスブックで世界最長寿と認定された。国から発表される長寿番付のトップを飾り、新聞にも大きく紹介された。だが、後に泉さんの戸籍の信ぴょう性が薄いという指摘が出て、現在では泉さんの記録はギネスから取り消されているそうだ。 泉さんは1986年2月21日に亡くなった。最長寿という記録は別にして年老いてもそのかくしゃくとした生き方は、私にはヒーローのように映った。では木村さんはどうか。地元の京都新聞は「月1、2回近所の特別養護ホームのショートステイに通い、新聞を読んだりしている日常だ。15日に体調を崩し、大事をとって入院したが、回復に向かっている」と、近況を伝えている。規則正しい生活と小食、腹八分目を守ってきたという木村さんの回復力を祈りたい。 明治の最後の年である45年(1912)生まれの人は今年で100歳を迎えた。その人たちを含め100歳以上の人は5万人を超えたそうだ。その一人ひとりに長い歴史があり、この日本を支えてくれたのだ。高齢者には住みにくい社会に向かっている。その苦難の歴史を学び、先人たちを大事にしたいと思う。 写真 こんな食事をしていれば、長生きすること請け合い?