小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

229 盛岡で出会ったいい話 お年玉切手シートのプレゼント

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日ごろ読んでいる新聞にはあまりいい話は載らない。世の中は気分が悪くなることが多すぎる。そんな思いで朝刊を開くのだが、盛岡に旅して地元紙・岩手日報の一面のコラムを読んだら、いい話が書いてあってうれしくなった。 せちがらい世の中とは、よくいわれる。しかし、コラムで紹介されたエピソードは、小さなことではあるが、ほろりとさせるものだった。   コラムによると、花巻市の75歳のAさん(新聞では実名)から新聞社の読者の声欄に投書があり、それが掲載された結果、Aさんにはうれしいプレゼントがあったというのである。そのいきさつも詳しく書かれていた。 Aさんは1959年から毎年年賀はがきのお年玉切手シートが当たり、コレクションにしていた。ことしは喪中だったため、数枚の年賀はがきしか届かず、切手シートが当たらなかった。Aさんは転勤族で、コレクションには転勤先の出来事や友人、知人との思い出を書いており、Aさんの人生にとって貴重な宝物なのだそうだ。 コレクションを続けるために、Aさんは郵便局に行ってみた。しかし「お年玉切手シートは非売品」といわれ、売ってもらえなかった。そこで、地元の新聞に希望者には販売するよう見直しをしてほしいと投書をした。 この投書が声欄に載ると、新聞社に中学生ら11人からAさんに渡してほしいと切手シートが届き、さらにAさんの自宅にも4人から切手が郵送されてきたという。多くは匿名でAさんは「名前の分からない人にはお礼のしようもないと恐縮している」とコラムは書く。 いい話には、実はオチがあった。コラムは続く。お年玉切手シートは、昨年までは非売品だったが、ことしになって東京中央局など2ヵ所で期間限定ながら販売することになったというのである。 しかし、広報が十分でなく、窓口に対する周知の不徹底から、Aさんが行った郵便局では冷たい対応を取ってしまったというのだ。コラムは「窓口が不親切だったことで、Aさんには思い出深い特別のコレクションになった」と結んでいる。 美談の裏には、郵便局側の対応のまずさがあったわけである。小泉改革で郵政省は解体し、郵政は民営化された。しかし、こうした話を聞くと、民営化以前と変わらないなと指摘されても仕方がない。 地方の多くの郵便局が廃止され、地方の人々の不便さは増していると聞く。郵政民営化反対を唱えた国会議員の多くが自民党にいつの間にか復党し、郵便問題はあまりニュースにもならない。 最近、政界再編をにらんだ活動を始めたと報じられた小泉さんに、コラムの感想を聞いたらどんな答えが返ってくるだろうか。(写真は、盛岡市内を流れる北上川