小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1177 予測できない展開でもうまく収拾する国民性 タイへの旅(5)

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 チェンマイに10年近く住む友人は、タイの人々についてよく観察をしている。友人によると、日常的にタイ人と接していると、大体予測のできない展開になる。それが面白くて退屈しないそうだが、結果的には何となくうまく収まってしまうことが多いというのである。

 そういえば、日本なら、こんなことはないという出来事に遭遇した。 チェンマイ滞在を終えて、タイ4日目の朝、ホテルから空港に向かうため予約したタクシーを待っていた。到着して、チェックインの際、友人がホテルのフロントに出発の際はスーツケースが3個あるので、大きい車を手配してほしいと頼んでくれていた。当日、玄関近くにいるドアマンに、タクシーの予約がしてあるかどうか確認すると、OKという返事が返ってきた。

 だが、待てぞ暮らせど大型のタクシーはこない。 このままでは飛行機の時間に間に合わない。ドアマンをせかすと、普通のタクシーを呼び、3個のスーツケースを乗せようとしたが、無理だった。タクシーの運転手は「こりゃあ、だめだ」という顔をして、荷物を降ろして走り去った。こちらの焦った顔を見たドアマンは、余裕たっぷりの表情で、じゃあとソンテウ(ソンテオ)という小型トラックの荷台を改造した乗り合いタクシー呼び、貸切で空港まで行ってくれと交渉してくれた。

 やってきたソンテウには先客がいたが、この人は前の助手席に移り、座席はスーツケース3個と私たち3人で貸切状態になった。雨が少し降っていて、開け放しの運転席側の窓から水滴が入ってきたが、飛行機には間に合った。私は少し腹が立ったが、タイが大好きな同行の家族は「旅の思い出の一つになった」と笑っていた。

 タイでは反政府デモが続いており、インラック首相がテレビを通じた演説で近く下院を解散し総選挙を実施すると表明したという。友人は冒頭のタイ人気質を踏まえて、「その場しのぎの達人(作家・下川祐治)」ぞろいのタイ人のことなので、予測のできない妥協が成立する展開になりそうな気がする」という見方をしている。この後のタイの政治情勢をウオッチするうえで、一つのキーワードになるのかもしれない。

 タイに行く前は木々の葉が紅葉し、落葉が始まっていた。1週間ぶりに帰ってみると、すでに街路樹は葉を落とし、7日には二十四節気の「大雪」(たいせつ)を迎えた。俳人中村草田男の「あたたかき十一月もすみにけり」(小春日和が続いた11月も過ぎ、慌ただしい師走になってしまった心境を詠った)句のように、いつの間にか12月になってしまった。 日本は明確な四季があり、季節の移ろいを示す二十四節気もある。一方、一年中木々から緑が消えない熱帯に属するタイ。こうした自然界の姿が国民性にも反映しているのかもしれない。

写真 1、タイの常緑の木に実がなった。そして、カトレアが 2、多数の警官が警戒するバンコク市内の政府施設 3、トゥクトゥク(小型三輪タクシー)とともに、庶民の足になっているソンテウ

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6回目へと続く