小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1089 日本初の小児がんの夢の病院が完成 行政の無知で全面オープンに難題

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 神戸市中央区ポートアイランド小児がんと闘う子どもと家族のための「夢の病院・チャイルド・ケモ・ハウス」がほぼ完成した。NPOチャイルド・ケモ・ハウスが各方面の支援を得て総工費7億円で建設した日本初の小児がん専門治療施設だ。

 4月からオープン予定だが、隣接する公園をつぶして市立病院の看護師寮を建設するという話が持ち上がり、施設の全面的利用ができなくなるという難題が持ち上がっている。このほど施設を見学して、問題点が浮上していることを知った。

 チャイルド・ケモ・ハウスは、小児がん患者が安心して化学療法(抗がん剤)の治療を受けられるよう、ハウス内には家族とともに滞在することができる共同住宅も併設してある。NPOはこの施設の建設のため公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金を立ち上げ、神戸市から3500平米の敷地を借り受け、鉄骨平屋建ての夢の病院(建築面積は1931・5平米)がこの2月に完成した。

 建物内には診療所コーナーと共同住宅(19戸、風呂、トイレ、キッチン付き)があり、共同住宅の子どものベッドの上と浴室には天窓がついている。灯りも暖色系のLFDを使い、ほこりを防ぐために床暖房を取り入れている。子どもたちが遊ぶ多目的ルームの天井には化学物質を吸着するボードを使うというほこり対策も万全だ。

 施設の隣には、公園があって環境もいい。 病院は4月からオープンを目指して、近く家具やカーテンなどを取り付ける作業が始まる。しかし、このオープンに水を差すような動きが出ているのだ。2月1日になって神戸市から、隣接する公園に9階建ての看護師寮を建設するという通告があったのだ。市議会でも予算が通り、新年度には工事が始まる見通しだという。

 病院をつくるために2005年から活動してきた小児科医の楠木重範さんは「土を掘り起こす工事で小児がん治療に大敵のカビなどの化学物質が発生する可能性が高く、共同住宅に子どもたちを泊めることは当分できない」と指摘し、このままでは全面オープンは無理と頭を抱えている。

 神戸市は、市有地を貸すなど夢の病院建設に協力した。しかし隣接地で工事を進めることが画期的施設の運用に大きな影響を与えるとは考えなかったのだろうか。看護師寮の計画段階で楠木さんらに相談していれば、こんなことにはならなかったはずだ。善意で看護師寮建設を進めたにしても、無理解と無知は悪意と同意義に取られてしまう。「工事期間の短縮を」と訴える楠木さんらチャイルド・ケモ・ハウス側の声をきちんと受け止め、夢の病院ができるだけ早く全面オープンできるよう協力すべきだと思うのだ。

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 写真 1、完成した夢の病院 2神戸港