小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1018 トルコの小さな物語 (1) 悠久の歴史と大自然の営みと

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 アジアとヨーロッパを結ぶ位置にあり、枝分かれしたシルクロードの1本の最終地点といわれるトルコを旅した。面積は日本の倍近い78万580平方キロ、人口は7500万人というこの国は、様々な顔を持っている。悠久の歴史とスケールの大きな自然を交互に見ることができた。トルコに魅せられた日本人が少なくないのも当然と思った。 これから随時、駆け足で歩いたトルコの旅を連載します。

 友人のお嬢さんがトルコ人と結婚し、トルコに住んでいる。友人はその結婚に猛反対したそうだ。似た話を1500万都市のイスタンブールでも聞いた。日本人観光客も目に付くさまざまな店が建ち並ぶエジプシャンバザールの入り口近くの土産物店の女性は、トルコに留学してこの国が大好きになり、トルコ人と結婚した。

 トルコ生活17年になる。両親は娘の結婚に反対し、勘当だといわれた。しかし、子どもが生まれ、孫を連れて日本に帰ると、ようやく結婚を許してくれたそうだ。 女性は44、5歳。トルコ人従業員の日本語の先生もやっている。生活はしやすく、夫も優しいが、トルコの男性は基本的には亭主関白ですよと打ち明けてくれた。

 その表情は落ち着いていて、トルコの生活に満足している様子だった。 トルコに魅せられたのは、今回私が参加したツアーの添乗員のOさんもその一人だ。OL生活をしていたOさんは、16年前、トルコへと観光旅行をした。

 勤務先の上司がトルコ観光大使をやっていて「ぜひトルコに行ってみなさい」と勧めてくれた。冬と夏のボーナスをためて、数少ないツアーに参加、やってきたトルコは彼女にとって人生観が変わるほど惹かれるものが多かった。エーゲ海に沈む夕日が心にしみた。 その後、彼女は旅行会社に転職し、海外を飛び回る生活を送っている。

「旅をする人々を世話する仕事へと人生を変えた原点は、トルコなのです」とOさんは話した。トルコ風呂(日本の風俗風呂とは異なる)といわれる垢すりやマッサージをしてくれるこの国の名物風呂に入った時は、バスタオルで下半身を隠していったのに、男性のマッサージ師に全部取られ、羞恥心で真っ赤になりながら垢をとってもらったことが忘れられないと言って、彼女は笑った。

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トルコを案内してくれたガイドの男性はジェンキさんといい、「元気さんと呼んでくれてもいいですよ」と冗談を言う。イスタンブール出身のジェンキさんは、大学で日本語を勉強し、東京の日本語学校で3カ月学んだだけというが、日本の事情に詳しく、トルコの歴史、自然の案内も的確だった。まさにガイドのプロと私は思った。1週間、ジェンキさんと付き合い、その知識の豊かさに感心することが少なくなかった。(続く)

写真は、いずれもトルコで有名なカッパドキアの気球