小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1023 トルコの小さな物語(6) イスタンブールの街角で

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 2020年の夏のオリンピック開催に立候補し、第1次選考で東京、マドリードともに残ったのが、トルコのイスタンブールだ。同じ年に行われるサッカーの欧州選手権の開催地としても名乗りを上げているが、都市としての潜在能力があると評価されており、東京にとって強敵といえそう。

 短期間の滞在でこの街のことが分かったとはいえないが、この街の活気や人々の熱気は相当なものだ。 車が多い割に道路網の整備が追い付かないため、大渋滞に遭遇した。中心部にあるサッカー場では、ちょうどスタジアムを見下ろす場所に道路があって、歩道から国内サッカーリーグの試合をただでのぞきこむ大勢の市民の姿を見かけた。

 日本なら考えられない、牧歌的光景に好感を持った。 休日には旧市街と新市街を結ぶガラタ橋の両側には、釣り糸を垂れる人たちがびっしり詰めかけている。旧市街のモスク群など素晴らしい眺めの中で、釣りをしている人たちは、みんないい表情をしている。

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 昨今のトルコの実情は―。昨年のGDP(国内総生産)は世界18番目だが、経済が上向いていてビルの建築ラッシュが続いており、ビル建築率は世界で2番目だったそうだ。ガイドのジェンキさんはトルコの人は広い住宅に住んでいて、狭くても100平米あると話していた。さらにトルコの人口の半分以上が30歳以下で、60歳以上は人口の8%というから高齢化が激しい日本と比べ、この国は「若者の国」である。若者たちは、自分で起業するなど実業家を目指す人が多いという。この国は、失敗を恐れないエネルギーに満ちているのかもしれない。

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 イスタンブールは、ヨーロッパとアジアの架け橋、あるいは東西文明の接点などと呼ばれる。旧市街にある「歴史地区」は世界遺産(文化)になっている。アヤソフィヤ、トプカプ宮殿、ブルーモスクといわれるスルタンアフメト・モスクなど、見ごたえのある歴史的建造物群には、国際色あふれる人々が集まってきている。イスタンブールは歴史好きにはたまらない街だ。夜、テュネルという1875年に開通した乗車時間2分という短い地下ケーブルカーに乗り、地上の繁華街に行くと、すごい人出が目の前に現れた。デモをしている若者もいて、元気な若者の街だと痛感した。

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 私がスペインに行ったのは2009年の9月のことだ。当時、首都マドリード市内には、2016年夏のオリンピック開催地として立候補した旗が数多く立てられていた。この直後に開かれたIOC総会で、3回の投票の末、マドリードはブラジルのリオデジャネイロに負け、2020年にも東京とともに立候補した。そして、一次選考で残ったのがイスタンブールと東京、マドリードの3都市だ。

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 個人的にはどこにも肩入れする気持ちはなく、どちらかに決まってもいいのではないかと思ったりする。3つの都市にはそれぞれに個性があるので、最終選考はけっこう難しいのではないか。8年後、3つの都市はどう変わっているのだろう。この中で一番変化しているのは、イスタンブールのような気がする。

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写真 1、クルーズ船から見たイスタンブールの旧市街 2、釣りを楽しむ人々(いまごろはアジが釣れるらしい 3、エジプシャン・バザールの人波 4、ボスフォラス海峡はクルーズ船でいっぱいだ 5、地下ケーブルテュネル 6、繁華街の夜の若い人たちのデモ風景