小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

694 猛暑に耐える日々の中で 8月のhanaのつぶやき

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 私はゴールデンレトリーバーのhana(雌、8歳)と言います。小さいころから車に乗るのが大好きでした。これまでは夏でも車に乗せてもらうのが普通でしたが、暑くてたまらないことしの夏は、家族はあまり車に乗せてくれません。

  だから、みんなが出かけるときには、大騒ぎをして走り回って「私も乗りたい」と態度で示すのです。すると、たまには乗せてくれます。日曜日もそれがうまく行って遠出をしたのですが、途中で具合が悪くなってしまいました。

  車は新しくて、エアコンもよく効いているはずでした。でも、後部座席に乗った私には暑くてたまらず、ついハアハアと荒い息を吐きました。ふだんなら私は大喜びで車に飛び乗り、開いた窓から外を見て、思い切り新しい空気を吸ってから足を長く延ばして、寝入ってしまうのが癖なのです。でも、この日は違いました。

  お父さんは高速道路を下りて、山道に入ると慌てて車を止めました。一緒に車に乗っていた家族が私を外に連れ出してくれました。私は息苦しさから逃れ、その辺の雑草の葉を手当たり次第に口に入れました。なんとなくお腹の調子がおかしいのです。お父さんも心配になったのか、車から降りて、私の様子を見ていました。少しだけおしっこをして動き回っていると、落ち着いてきました。

  それを見計らい、家族は再び車に乗って目的の「道の駅」に向かいました。そこは成田空港に隣接した千葉県多古町にあり、人気のある道の駅なのだそうです。たしかに、多くの人でにぎわっていました。お腹の調子がおかしい私は、車を降りて、すぐにウンチをしてしまいました。

  そのあとでベンチに座ったお父さんの足元に寝転んで家族が買い物を終わるのを待っていました。そこは日陰で涼しい風も吹いていました。近くには黒いラブラードールレトリーバーがいて、飼い主に水をもらい私と同じように寝転んでいます。

  家族は道の駅で「多古米」というブランド米の新米を買ったそうです。まだ8月なのに道の駅では「コシヒカリ」の新米を販売していたのです。「早生の品種で値段は高いけど、精米したばかりのコメが売り出されていたのでつい買ってしまったわ」と、家族が話していました。たぶん、おいしい米なのだと思います。

  家族は私の様子が心配で寄り道はやめたようです。でも帰りの高速でも再び荒い息遣いをしてしまいました。ほかの犬と比べ、私はあまり水分をとりません。家の決まった容器以外は嫌なのです。お父さんが容器から手に水を入れて飲ませてくれる時がありますが、そんな時は、悪いので少しだけ飲むことにしています。(これは内緒)のどは乾いていましたが、この日もそうでした。

  人間は汗を流して体温の調整ができるそうですが、私たち犬族ははそうはいきません。毛皮を着ている状態なのに体温の調整ができないのですから、異常な暑さが続くことしの夏は、熱中症にかかる仲間も多いと聞ききます。私もそれに近い症状だったのかもしれません。

  家に着くと私は専用の容器で水をがぶがぶ飲みました。エアコンの効いた部屋で横になると、気分は少しずつなくなり、落ち着き、睡魔に襲われました。

  夕方、私は家族に連れられて動物病院に行きました。最近、耳が赤くただれ、お尻も少し痒い状態なのです。その治療でした。いつものおじいちゃん先生は、耳の治療をしながら「こんなことをされると、かみつく犬もいるのですが、大丈夫かな」と言いながら、私の耳をさわっていました。「大丈夫ですよ、先生。私はいつもお世話になっている先生を忘れてはいませんよ」と思いながら、我慢していました。こうして、私の長い一日がようやく終わりました。

  8月も残りあとわずか。9月も残暑が続きそうです。家族も私も我慢比べの毎日です。