小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1293 hana物語(35) つぶやき12

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「ドライブ中の出来事 hanaのつぶやき」

 私は小さいころから車に乗るのが大好きでした。これまでは夏でも車に乗せてもらうのが普通でしたが、暑くてたまらないことしの夏は、家族はあまり車に乗せてくれません。 だから、みんなが出かけるときには、大騒ぎをして走り回って「私も乗りたい」と態度で示すのです。すると、たまには乗せてくれます。

 日曜日もそれがうまく行って遠出をしたのですが、途中で具合が悪くなってしまいました。 車は新しくて、エアコンもよく効いているはずでした。でも、後部座席に乗った私には暑くてたまらず、ついハアハアと荒い息を吐きました。ふだんなら私は大喜びで車に飛び乗り、開いた窓から外を見て、思い切り新しい空気を吸ってから足を長く延ばして、寝入ってしまうのが癖なのです。でも、この日は違いました。

「お父」は高速道路を下りて、山道に入ると慌てて車を止めました。一緒に車に乗っていた家族が私を外に連れ出してくれました。私は息苦しさから逃れ、その辺の雑草の葉を手当たり次第に口に入れました。何となくお腹の調子がおかしいのです。「お父」も心配になったのか、車から降りて私の様子を見ていました。

 少しだけおしっこをして動き回っていると、落ち着いてきました。 それを見計らい、家族は再び車に乗って目的の「道の駅」に向かいました。そこは成田空港に隣接した千葉県多古町にあり、人気のある道の駅だそうです。たしかに、多くの人でにぎわっていました。お腹の調子がおかしい私は、車を降りて、すぐにウンチをしてしまいました。

 そのあとでベンチに座った「お父」の足元に寝転んで家族が買い物を終わるのを待っていました。そこは日陰で涼しい風も吹いていました。近くには黒いラブラドールレトリーバーがいて、飼い主に水をもらい私と同じように寝転んでいます。 家族は道の駅で「多古米」というブランド米の新米を買ったそうです。まだ8月なのに道の駅では「コシヒカリ」の新米を販売していたのです。

「早生の品種で値段は高いけど、精米したばかりのコメが売り出されていたのでつい買ってしまったわ」と、ママが話していました。たぶん、おいしい米なのだと思います。 「お父」とママは私の様子が心配で寄り道はやめたようです。でも帰りの高速でも再び荒い息遣いをしてしまいました。ほかの犬と比べ、私はあまり水分をとりません。家の決まった容器以外は嫌なのです。

「お父」が容器から手に水を入れて飲ませてくれる時がありますが、そんな時は、悪いので少しだけ飲むことにしています。(これは内緒)のどは乾いていましたが、この日もそうでした。 人間は汗を流して体温の調整ができるそうですが、私たち犬族はそうはいきません。毛皮を着ている状態なのに体温の調整ができないのですから、異常な暑さが続くことしの夏は、熱中症にかかる仲間も多いと聞ききます。私もそれに近い症状だったのかもしれません。

 家に着くと私は専用の容器で水をがぶがぶ飲みました。エアコンの効いた部屋で横になると、気分は少しずつ良くなり、落ち着いてきて睡魔に襲われました。 夕方、私は家族に連れられて動物病院に行きました。最近、耳が赤くただれ、お尻も少し痒い状態なのです。その治療でした。いつものおじいちゃん先生は、耳の治療をしながら「こんなことをされると、かみつく犬もいるのですが、大丈夫かな」と言いながら、私の耳をさわっていました。「大丈夫ですよ、先生。私はいつもお世話になっている先生を忘れてはいませんよ」と思いながら、我慢していました。

 こうして、私の長い一日がようやく終わりました。8月も残りあとわずか。9月も残暑が続きそうです。家族も私も我慢比べの毎日です。(2010・8)

 

「夏の思い出 hanaのつぶやき」

 落ち葉の季節になりましたね。街路樹のけやきの落ち葉がだいぶ私の散歩コースでも目立ちます。強い風が吹いたあとは、その落ち葉が道路のわきにたまります。 散歩の度にそこにみんながマーキングをしますので、気になってついそこに鼻先をつけたくなります。

 気の短い「お父」にはよく怒られますが…。それにしても散歩はいいですね。私は朝と夕方の散歩で、落ち葉を踏みしめながらことしの夏を出しています。 8月に耳が赤くなり、動物病院にかかりましたが、おじいちゃん先生の薬を飲んでいたら、1カ月ほどで治りました。以前はおなかを壊してよく病院に行きましたが、最近は落ち着いています。でも、恥ずかしいのですが、一つだけ問題があることを話しますね。

 2週間前ごろから、夜になって寝たあとでオシッコが我慢できなくなることが何度かありました。寝静まっているこの家の人を起こすのは悪いとは思いつつ、つい「お父」たちの布団の周りをうろうろし、早く気付いてと、「お父」やママの顔をぺろぺろなめてしまいます。

 すると、ようやく目を覚まし外へ出してくれました。夜中の2時、3時にこんなことが重なりました。 まだ病院には行っていませんが、近いうちに定期健診があるので、連れていくとママは言っています。夜、寝る前に外へ出してくれるので、いまのところ夜中に起きることはありません。おじいちゃん先生が優しいから我慢しますが、やはり病院に行くのはいやだなあと思います。

 ところで、夏の間はあまり乗ることができなかった車に遠慮なく乗ることができるのは何といってもうれしいことですね。こんなに車が好きな私は変な犬なのでしょうかね。 車と言えば、「お父」のいい加減さが分かる出来事がありましたよ。家族のみんなに笑われていましたので、つい聞いてしまいました。

 この家にあるのはガソリンの消費量が少ない人気のある車だそうです。難しい言葉で「燃費」というのだそうですが、「お父」は夏ごろから急に「燃費が悪い」と言い出しました。 エアコンを使っているのだから仕方がないかなどともつぶやいていましたが、車の販売担当者が来たときには「ふだんの燃費は16、7キロですよ。ひどいでしょ!高速を走るともう少しいいのですが」と話していました。

 ところが、先日定期点検に出したら、整備の人に「タイヤの空気がかなり減っています」と注意されたのだそうです。「お父」は「そういえば買ってから一度もタイヤの空気圧を点検してないな」と、頭をかいていました。そして、タイヤに基準の空気を入れてもらったら、燃費は急によくなったというのです。 車に乗って何十年もたつ「お父」がこれですから、似たような車音痴はほかにもいそうですね。

 そんな「お父」の運転でも、乗ってからしばらくすると座席で寝てしまいます。「お父」が運転し、助手席にママが座っているのを見ていると安心して眠くなります。これが私の幸せな時間なのです。 今年も間もなく12月になります。人間には忙しい月のようですが、私はあまり気になりません。

 そして年末・年始になると、みんなが家にいることが多いので、それが一番待ち遠しいですね。みんなが私を相手にしてくれるので楽しいのです。そんなことを考えながら、きょうも横になっています。外では、けやきの葉が風に舞っています。ああ親類のノンちゃん(ミニチュアダックスフンド)にも会いたいなあと、ふと思いました。(2010・11)

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