小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

693 世論の呉越同舟 前代未聞の3新聞の社説

きょうの朝刊には民主党代表選が大きく報じられている。東京で発行されている主要6つの新聞は全紙社説(産経は主張)でも取り上げ、うち朝日、毎日、産経の3紙は「前代未聞」ともいえる論調を張っている。

昨日、代表選への立候補を表明した小沢一郎前幹事長を「不適格」と断じているのである。しかも主張が異なることが多い朝日と産経が歩調を合わせているのだから、まさに「呉越同舟」だ。世論の代表を自負する新聞が、このような形で与党の党首選びにはっきり物を言うのは珍しいと思う。それほど小沢氏には問題が多すぎるということだろう。

3紙の社説の見出しはこうだ。「あいた口がふさがらない」(朝日)、「小沢氏出馬 国の指導者に不適格だ」(産経)、「大義欠く小沢氏の出馬」(毎日)。いずれも、「政治とカネの問題で2カ月半前に幹事長をやめたばかりの小沢氏が、代表選に出るのはおかしい」という論調で、朝日と産経が「あいた口がふさがらない」と同じ表現を使っているのを見て、小沢氏の大きな口を思い出しつい笑ってしまった。

このほか産経は「日本の最高指導者として不適格」とも断じ、毎日は「首相候補として適格性が問われる」と書いている。

これほどまでの「ののしる」ような厳しい批判を小沢氏は予想した上で、代表選に名乗りをあげたのだろうか。新聞なんて、恐れるに足らずと思っているのかもしれない。そうだとしたら、小沢氏の認識は甘いのではないかと思う。

これまで紹介した3紙以外では読売、日経、東京とも3紙のような小沢批判は控え、社説の見本(失礼)のような、きれいごと=優等生的論調を掲げている。新聞社で論説委員をしている友人は「社説なんて、だれも読まないよ」とうそぶいている。優等生的社説ではたしかにその通りだ。

だが、3紙の見出しを見ただけで、ふだんは社説を読まない私も「おや!」と思い、読んで見たのだ。小沢氏や小沢応援団には耳の痛いことばかりが書いてあり、新聞の社説もたまには面白いものだと思った。これだけの新聞を敵に回して小沢氏はどんな戦いをやるのか興味がある。仮に菅氏に勝っても、破綻するのは目に見えていると思うのだが・・・。

ところで、「呉越同舟」は、中国の故事からの言葉で「仲の悪いもの同士がたまたま同じ場所に居合わせること」や「反目する者が同じ目的のために、一時的に協力すること」という意味だ。政治の世界では離合集散や呉越同舟的行為は日常茶飯事だが、これらの言葉を連想させる動きがこれから当分続くだろうと想像する。全く、どうしようもない世界だ。