小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

394 「石敢當」の意味は  世界各地に必要な魔よけ

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 沖縄を歩くと、方々で「石敢當」という文字が彫られた石が目に付く。何の意味なのだろうか。 近代的なホテルの入り口近くの角にもあるので気になり、受付の女性に聞いてみた。「魔物は真っ直ぐ玄関には向かわず、角を通ってやってくる習性があり、そこに魔物よけとして、あれを建てたのです」という返事が戻ってきた。 なるほど、魔よけか。でも、石敢當の意味は依然分からない。

 そんなもやもやした気持ちを抱きながら、現地の新聞を開くと、何とこの文字について放送人という肩書きを持つ上原直彦さんが長い文章を書いているではないか。 上原さんのその文章によると、この文字は「せきかんとう」あるいは「いしがんどう」と読む。そして、その由来は次の通りだ。

(昔、中国のある国に石敢當という強力無双の豪の者がいて、他国の軍勢やちみもうりょうですら石敢當が防御すると聞いただけで退散するほどだった。いつのころからこれが琉球に伝来、石杭にこの名前が彫られ三叉路や四辻に設置され、魔よけとして威力を発揮した。邪気をはらい、福を招くや向かうところ敵なしの意味がある) この石杭はJR川崎駅前にもあると上原さんは書いている。

 1966年(昭和41年)9月、沖縄諸島は数次の台風に見舞われ、大きな被害を受けた。中でも宮古緒島の被害は甚大だった。この被害に対し川崎市議会は超党派で救援を決議し、全市的な救援活動をした。 そのお礼として宮古特産のバーチンという石に石敢當を刻んで贈ったものが、いまも駅前にあり、道行く人々を見守っているのだという。

 川崎の石敢當には「古来中国の強力無双の力士の名前」という説明もある。 上原さんは、新聞に寄せた文章のなかで「ホワイトハウスや日本の国会議事堂の前にも建てなければならない時代が来ている」とも書いている。 世界同時不況が進行する中で、上原さんの言うように、何を拠り所にして明日を生きるかと思い悩む人は全世界で急増しているのは間違いない。こうした時代だからこそ石敢當の重みが増しているのかもしれない。