小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1117 ヒースロー空港のトラブル 添乗員の役割は?

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添乗員付きのヨーロッパのツアー旅行に参加した仙台市の50代の男性が、イギリス・ロンドンのヒースロー空港に置き去りにされ、精神的苦痛を受けたとして、ツアー元の旅行会社を相手に40万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こしたことが話題になっている。飛行機に乗り遅れた男性客に対し添乗員が「頑張って帰ってきて」と携帯電話で伝えたことも新聞の見出しになっていた。 報道によると、男性は今年1月に企画されたスペインとポルトガル8日間のツアーに参加し、ヒースロー空港乗り継ぎで帰国する予定だった。同空港はテロ警戒のため厳しい手荷物検査があり、訴えた男性と女性の添乗員、女性客の3人が無作為で再検査の対象になった。添乗員と女性客は先にこの検査が終わり、成田行きの飛行機に乗った。しかし、男性は離陸時間に間に合わず、添乗員は携帯電話で「飛び立つのでもう乗れない。頑張って帰ってきてください」と話したのだそうだ。男性は自己負担でさらに1泊し、英語が話せないため案内ガイドを雇った。帰国してから男性に対し旅行会社は「会社に過失はないので費用は補償できない」と回答したという。 このケースについて裁判所がどう判断するだろうか。添乗員の詳細な行動が分からないので論評はできないが、和解が妥当なところではないか。以前、同じ旅行会社の企画でスペイン、ポルトガルの10日間のツアーに参加したことがある。そのツアーで、現地の運転手が運転しスペインの首都・マドリードから世界遺産のクエンカとバレンシアに向かう途中のバスが何回も道に迷った。その迷走ぶりにあきれたが、この時の添乗員はバスが何度も道を間違えたことについて、一言も謝罪の言葉を口にしなかった。 この後、バルセロナで土砂降りに遭遇した。大半の人たちが「雨に濡れるから市内を歩く観光はやめたい」といっても、この添乗員は「契約ですから」といって、土砂降りの中、バスから私たちを降ろして市内を歩かせた。みんながびしょ濡れになり、無理に歩かせなくともいいのにという声が出ていたことを覚えている。今回の裁判記事を読んで、添乗員は臨機応変な対応はできないのだろうかと思った。 先日、北海道に行った際、乗った日航機の新千歳空港着が30分近く遅れた。JRで新千歳の次の南千歳から特急に乗る時間が迫っていたため客室乗務員に聞くと、間もなく着陸するという返事だった。しかし、同じところを何度も旋回していておかしい。ようやく着陸すると、「空港混雑のため着陸が遅れ申し訳ありません」というアナウンスが流れ、客室乗務員はすまなそうな顔で私を見送ってくれた。 もう少し余裕を持った乗り継ぎを計画しなかった私に非があることを考えると、ヒースロー空港でも乗り継ぎ時間はたっぷりあったはずだから、この空港の検査の厳しさを想定して集合時間をもっと早くセットすればいいし、乗り遅れた客の対応も別の方法ができたと思う。辞書には「添乗員は団体旅行に付き添い、客の世話をする旅行会社の職員。交通機関の乗務手続き、旅館との交渉、日程の調整などにあたり、円滑な旅行の実施を図る」(大辞泉)と出ていた。一度、同行した添乗員目当てにグループをつくって、またその添乗員と旅をする人たちがいると聞いた。まさに添乗員冥利に尽きる話だと思う。そんな添乗員と一緒の旅は、思い出に残るだろう。 写真は、以前私が撮影したヒースロー空港内。 スペインの「迷走運転手に笑う」のブログはここから