小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1080 「いのちの賛歌」とアルジェリア人質事件の被害者たち 尊厳・最高の価値のはずなのに

友人のブログ「冬尋坊日記」の最新の記事にマザー・テレサの「いのちの賛歌」という詩のことが出ていた。その詩を読みながら、アルジェリアイスラム武装勢力による人質事件のことを考えた。現地でプラント建設に当たっていた日本人を含む多くの命がこの事件で失われたからだ。

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いのちは美、感嘆しよう 

いのちはチャンス、活用しよう 

いのちは仕合わせ、味わおう 

いのちは夢、実現させよう 

いのちはチャレンジ、受けて立とう 

いのちが義務、果たして尽くそう

いのちは遊び、楽しもう 

いのちは尊厳、大事にしよう 

いのちは富、保ち続けよう 

いのちは愛、与え合おう 

いのちは神秘、黙想しよう

いのちは約束、守り抜こう 

いのちは悲哀、乗り越えよう 

いのちは賛歌、歌い上げよう

いのちは闘い、立ち向かおう 

いのちは冒険、取り組もう 

いのちは報い、感謝して受けよう

いのちはいのち、最高の価値とみなそう

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政府は亡くなったことが確認された日本人7人の身元を発表していないが、メディアには2人のことが出ていた。そのうちの1人、伊藤文博さん(59)の母親のフクコさん(82)は宮城県南三陸町の家を東日本大震災で流され、仮設住宅で暮らしているという。2月には同級生たちが南三陸町で還暦祝いの会合をする計画があり、伊藤さんからも出席するという返事が来ていたそうだ。伊藤さんの妻から連絡を受けたフクコさんが「自分の子どもがこんなことになって、どうしようもない。私も死にそうです」(毎日)という、くだりを読んで涙がこぼれた。

鹿児島県肝付町出身で神奈川県藤沢市の渕田六郎さん(64)のことも報道されている。渕田さんは9人きょうだいの末っ子で、長く勤めた建設会社を定年退職後も海外の仕事を続け、兄をスカイツリーに招待したことや昨年暮れには肝付の実家に墓参りに帰省したことなどが記事(読売)には出ていた。

今回、政府が人質被害者の名前の公表を控えたのは被害企業・日揮からの要請によるものだという。その日揮は「遺族や厳しい体験をして帰国してくるスタッフにこれ以上ストレスやプレッシャーを与えることは会社として避けなければならない」と理由を説明する。

これに対し、内閣記者会が「国民の関心が非常に高く、政府が安否確認や情報収集などで全面的に関与している。2004年4月と10月のイラク人人質事件で、当時の福田官房長は被害者氏名を公表している」などの点を挙げ、被害者の名前の開示を申し入れた記事も各紙に出ていた。当然のことである。

多くの社員を失った日揮の動揺は理解できるが、これでは犠牲者は浮かばれまい。近く社葬なども行われはずだ。伊藤さんと渕田さんのことが出身地から明らかになったようにいずれにしても隠すことではない。企業の海外での危機管理の在り方や政府の情報収集の稚拙さ、アフリカの貧困対策などこの事件を通じて浮かび上がった課題は多く、人質たちの無念の死を無駄にしてはならないと思う。いのちは尊厳であり、最高の価値なのだ。

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