小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

758 奇跡のような初日の出 輝く飛行機雲に幸あれと祈る

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このところ、犬の散歩をしながら初日の出を近所の遊歩道で見ている。ことしも7時前に家を出て決まった場所に行き、東の空を見上げると飛行機雲が長く伸びている。 少しして太陽が次第に顔を見せ始め、飛行機雲が太陽の真上から西の空へと続いている。美しい自然のショーに見とれながら、ことしは何かいいことがありそうだと思った。 飛行機雲は、飛行機の航跡に生じる細長い線のような雲だ。ジェット機などのエンジンの排気ガスによって発生するのと翼の周辺の気圧が低くなることによって起きるケースの2つがあるという。 けさの飛行機雲は、太平洋の方から羽田に向かう旅客機によって発生したと思われ、長く伸びた雲は東の空から羽田方向へと向かっていた。 ふだん見ることができる飛行機雲は、白い筋のようになっているが、けさの雲は太陽に照れされて茜色に輝いていた。その空は藍色に澄んでいる。この場所は、近所の人たちが散歩を兼ねて毎年集まる「初日の出見物」の名所になっており、けさも50人近い人たちが東の空に向かって一斉に顔を向けていた。 老若男女の顔は太陽の光で輝いて見える。私を含めここに集まった人たちは幸運だった。まさに「奇跡のような」初日の出だったからだ。手を合わせ何かを祈る人の姿がある。それに応えるかのように、太陽が全部顔を出しても飛行機雲はくっきりと西の空を目指して流れている。 現在、日本の政治・経済は低迷を続けている。閉塞感という「暗雲」が列島の上空を覆い尽くしているかのようだ。生きることに絶望し、力尽きてしまう人々が少なくない。 俳人山口青邨(やまぐちせいそん)に「初空の藍と茜と満たしあふ」という句がある。元日の朝の空の色を詠ったこの句について、山本健吉は「藍と茜が東天に溶け合い、匂い合って、その中に新春の気がほのぼのと感じられる」と評している。 けさの空にも藍色と2つの茜色(太陽と飛行機雲)が広がっていた。それは閉塞感を吹き飛ばしてくれるような爽快さにあふれていた。画像画像