小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

713 「ローマへの道」紀行(4) アドリア海に想う

画像バルカン半島アドリア海クロアチア沿岸は、複雑な地形が織りなす景観が美しい。中でも次回5回目に紹介するドブロブニクは中世の街並みが残る世界遺産として有名だ。しかし、この沿岸にはシベニク、トロギール、スプリットなどドブロブニクにひけをとらない街がひしめいている。 もう10月なのにトロギールの海岸では、早朝老人と男の子が海に入って戯れていた。ホテルは、高台にあるものとばかり思っていた。何しろ、フロントから見下ろす夕焼けの海が輝き、オレンジの家々の屋根も眼下にある。朝になって高台から海岸まで遠回りして歩いてみると、何とホテルの1階は海岸に面しているではないか。ホテルは斜面に建てられ、フロント(9階)や私たちの部屋は上の方にあったから、勘違いをしていたのだ。 9月下旬。クロアチアと日本の気温差はあまりない。早朝の海岸は散歩をしていて心地いい。しかし、海は入るのをためらう水温のはずだ。それなのに老人と孫と思われる小学生くらいの男の子が海に入って遊んでいる。ペットの犬にも「おいで、おいで」と誘うが犬は警戒してなかなか海の中に入らない。 画像 シベニク、トロギール、スプリットはクロアチアでも有数のリゾート地だという。どこに行っても人が多く、しかも暗さは微塵もない。内戦の後遺症から完全に立ち直ったといっていいだろう.。 トロギールは「聖ロブロ大聖堂」、シベニクは「聖ヤコブ大聖堂」という世界遺産があり、スプリットの「ディオクレティヌス宮殿」もそうだ。この地域を支配したローマ帝国時代の文化遺産が少なくない。
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近年、経済破たんしたアルバニアからこのバルカン半島を経由してEU諸国に亡命するケースが目立つそうだ。ドブロブニクから船でイタリアのバーリ入り、入国審査を受けようと列を作ったときに、前に並んだアルバニア人のグループに対し、厳しいチェックがかかった。そのあおりで、1時間近く審査を待たされた。不法入国をイタリアも警戒している表れだ。 今回の旅はダイヤモンド社発行の地球の歩き方クロアチアを参考にした。この本には副題として「世界遺産と島めぐり 紺碧の海と煉瓦色の町を訪ねて」とある。文字通り、そうした自然を楽しみ、街を歩いた。イタリアに入りなぜか、旅愁を覚えた。それは、クロアチアの自然と街並みに対する深い思いだったのだろう。
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