617 本を読めば「人相がよくなる」 ある元裁判官の読書論
活字離れ、読書と縁のない学生の増加・・・。そういわれて久しい。しかし、書店に行けば、新刊本がズラリと並んでいる。おかしな時代だ。
そんなことを思いながら、手もとにあった調停時報という冊子を読んでいたら、元裁判官が読書に関して面白いことを書いているのを見つけた。
かなり参考になる人生の先輩の読書論である。なるほど、こんな本の読み方があるのかと、感心することが多いのである。
この元裁判官は、川口冨男氏(元高松高裁長官)である。調停委員を対象にした講演で川口さんは調停に関して「あるべき姿」を具体的に述べた後、最後に「文学に親しむことと文学に関する雑談」として、読書に関する私見を披露した(調停時報175号)のだ。
川口さんは、読書のすすめとして7つの理由を挙げる。私からすると、よくここまで考えたなと舌を巻く思いなのだが、簡略化してそれを記してみる。
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1、 物事がよく見え、よく分かるようになる。
2、 好奇心、共感力を高め、深める働きがある。
3、 (読み、聞き、考え、話し、書くという)言葉力が増す。
4、 教養が身につく。
5、 リアルタイムの(あるいは少し前の生き生きとした)感覚を保持できる。
6、 時代を先取りして問題意識を持てるようになる。
7、 人相が良くなる。卑しくない顔になる。(作家の出久根達郎の言葉)
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一々説明を加えることはないと思う。どんな職業に就いても、読書の習慣を持つことは決して損にはならない。
川口さんは「言葉力を涵養する方法として多数の人と交際し、会話をするということもあるが、読書ほど普遍的な効果は期待できない。一に読書、二に読書、三、四がなくて五に読書」としたうえで「読書で鍛えた言葉力を持っている人の書いた文章は、輝きがあるものだ」と言い切っている。
川口さんが列挙した7つのうち、私の場合は、7番目の「人相が良くなる」に共感を持つ。(本当ですよ!)自分の顔に自信を持つためにも、読書の効用を信じたいのだ。
いまの政治家たちは人相が悪い。独断と偏見だが、読書をしなくなったことがその原因なのかもしれない。かつての首相の中には、毎週のように虎ノ門書房に通った読書好きもいたが、そんな人はもういない。