小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

378 野島崎のアロエの花

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新年のある一日、勝浦から館山、白浜に至る房総半島を回った。柔らかい日差しの中で色とりどりのポピーの花が咲いている。房総半島最南端にある野島崎灯台に行くと、周辺では、橙色のアロエの花が観光客の目をひいている。 のんびりと海を見つめ、カメラを構える人たち。暖かな日差しの中を幸せそうな家族連れが遊歩道を歩いている。ここから約100キロ先の東京で現代の日本を象徴する出来事が起きていることが信じられないほどの穏やかな新年の光景だ。 日比谷公園に開設された「年越し派遣村」に集まった人たち約500人が厚生労働省の講堂に移り、5日にはまた別の公共施設に移動するのだという。1年前の正月、こうした事態が生じるとだれが予想しただろう。しかし働く意思がありながら、住む家もその日の食事に困る人々が現代日本で数多く存在するのも現実なのだ。 新聞を読んでいたら、こうした苦境に立つ人たちへの俳優・仲代達矢さんの応援の言葉が掲載されていた。仲代さんは、極貧の少年時代を送り、役者としても苦労続きの生活を送ったが、いつも思うのは「人間は太陽がある限り生きていける」ということだという。仲代さんは、いまの状況が厳しくても「うろたえちゃいけない」と、人生の達人として人生を語る。 リストラで生き残ろうとする企業経営者に対しては、単純な話ではないかもしれないがとしながらも「これまでずいぶんもうけてきたでしょう。ためたお金を彼らに与えたらどうですか」「自分たちの給料を下げて、下の人たちを上げていいじゃないですか」と注文している。この新聞を見た経営者たちはどう思っただろうか。 仲代さんの言う通りだと思う。政府のスポークスマンである河村官房長官も5日の記者会見で「企業の社会的責任の議論もある。こいうときに内部留保を活用し有能な技術を持った人材を確保することは経営者の姿勢の問題だ」と述べたという記事も流れた。 世界同時不況が進行する中で、広い意味での日本企業の社会的責任(CSR)が問われているのだ。