小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

164 海外で生活する日本人 人間の生き方を考える

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ニュージーランドを旅して、何人かの日本人ガイドに世話になった。クライストチャーチクイーンズタウンオークランドと、それぞれの都市に住み着いた人たちだ。この国に渡ったのは、それぞれ事情が違うが、いつの間にか日本への帰国を先延ばしにして「山と湖と羊の国」の生活に浸っているのである。 この国有数のリゾート地、クイーンズタウンの日本人女性ガイドは、ご主人とともにこの国で暮らし、ガイドで生計を立てている。世界遺産のミルフォード・サウンド、マウント・クックへの日本人観光客の案内が仕事だ。クイーンズタウンから2つの世界遺産の地を目指すには、車で片道約300キロもあり、往復では長時間を要する。家に戻るのが、夜の8時、9時になってしまうこともしばしばだ。そんな時、小学生の子どもは、夫が面倒を見ていると聞いた。 彼女に日本に帰りたくないかと聞いた。「いつも乾燥していて、顔もぱりぱりになってしまうニュージーランドにいると、たまには湿気のある日本に帰りたいと思うことがあります」と言う。しかし、日本に帰国して2、3日が過ぎると、もうその湿気がいやになり、ニュージーランドへの帰心が募ってしまうのだそうだ。彼女は夫婦ともいまは日本に帰ることは考えていないと話し、郊外に家も購入し、クイーンズタウンの生活が気に行っているようだ。 オークランドで会った男性ガイドも面白い人だった。高校時代からラグビーをやり、大学に進んでニュージーランドラグビー留学をした。この国は、有名な「オールブラックス」という最強チームを持ち、世界一にランクされるラグビー王国だ。日本のラグビー選手にとっては、憧れの国なのだ。男性ガイドもそうした一人だったのだろう。 彼は、留学したこの国がすぐに好きになった。人々は優しく、ゆったりと生きている。日本に帰らず、ここで生きていこうと決心し、結婚した日本人の女性とともに、オークランド郊外に購入した家で海外暮らしを続けている。「この国は暮らしやすいですね。日本に帰ることは考えていません」と、彼も言う。「ただ、カジノにのめりこんで、ゆうに日本の高級車1台分ぐらいは取られてしまいましたが」という失敗談もある。
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2人の例は、たぶん珍しいものではないはずだ。いま、世界各地で2人のような日本人がかなり存在しているのではないか。定年後の海外移住もそう珍しいものではなくなった。グローバル化という言葉もいろいろなところで使われる時代なのだ。 いずれにしても海外に住むこうした人々は、日本とその国のパイプ役としての役割も果たしているのである。それにしても、いろいろな生き方があるものだと感心する。ニュージーランドで生活する日本人たちの表情は屈託がなかった。充実した日々を送っているのだと想像した。(2007.9.14)