小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

43 26歳に60億円の偏り

ポスティングシステム(入札制度)という人身売買のような制度で大リーグ移籍を目指した西武の松坂大輔投手(26)を落札したのは、ボストン・レッドソックスで、落札額は破格ともいうべき5111万1111ドル11セント(約60億円)だった。

スター選手はファンに夢を与える。だから高額の契約金を受け取ることには、反対しない。しかし、今回の動きを見ていて、釈然としないのだ。

貧乏人の妬みというわけではない。西武はレッドソックスから、巨額を受け取るわけで、エースを失っても損得勘定からすれば損をしないと判断したのだろう。

だが、待てよといいたい。26歳といえば、一般社会では駆け出しにすぎない。一芸に秀でているからといって、一選手を対象にこのようなマネーゲームのようなことをするシステムはおかしい。

いま、日本経済はバブル崩壊からようやく回復した。だが、その背景には多くの国民の犠牲が伴った。多くの企業は社員を少なくして、派遣社員契約社員という「安上がり」政策を維持している。

そして、多くの若者は安い賃金で日夜苦労をしている。こういう時代、若い親たちは、子供たちが有名大学を卒業し、官庁や一流企業への就職することを望んで、学習塾へと通わせる。

さらに、もう一方ではサッカー選手や野球選手となり、大金を稼ぐ道を選んでほしいと子供の尻をたたく。

現代はアメリカをはじめ「偏った時代」だと痛感する。「格差社会」という言葉もある。松坂の移籍をめぐる大金騒動は、この社会を象徴する出来事だと思うのだ。