小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

203 「マリと子犬の物語」&「さくら」映画と小説で活躍する犬たち

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 自宅で犬を飼っていることもあって、犬が重要な役割を占める映画や小説にすぐに目が行ってしまう。中越地震の際の実話を基にした映画「マリと子犬の物語」を西加奈子の小説「さくら」は、映画と小説の違いはあっても犬が準主役の物語であり、私の興味の対象になった。

 映画は子役と犬たちの演技(犬が演技をするのかどうかは分からないが)がよかった。小説の方は、以前読んだという娘が「何を言いたいのかよく伝わらなかった」と感想を話していたが、私には西の言わんとすることがよく理解できた。 映画は中越地震で大きな被害を受けた新潟県山古志村(現在は長岡市と合併)が舞台だ。

 母が若くして死んで、幼い兄と妹は父と祖父と暮らしている。捨て犬を見つけたきょうだいは、この犬を拾い「マリ」と名付ける。 3匹の子犬も生まれるが、山古志は大地震に見舞われ、祖父と孫娘が家の下敷きになる。マリの懸命な動きで2人は助けられ、ヘリで長岡に運ばれる。しかしマリは子犬とともに村に取り残される。過酷な運命が犬たちに待っているはずだ。

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 小説は尻尾にピンク色の花びらをつけていたために「サクラ」(小説の題名は平仮名)と名付けた犬の飼い主一家に起きる悲劇と分散、そして再会の物語だ。西のあとがきの最後がいい。「私の尻尾は今、あんまり振りすぎて、どこかに飛んで行きそうです」 私の家の犬もよく尻尾を振る。私に比べると娘や妻に対しての振り方は尋常ではないくらいだ。そんなうれしい表現を私たち人間は忘れてしまうほど、昨今の日本はつまらない事象が多すぎる。