小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

52 裸の王様より悪い人たち

  日本の地方政治はいつになっても成長しない。そんなことはないという反論がありそうだが、昨今の福島、和歌山、さらに宮崎と相次ぐ知事の逮捕劇を見ていると、どうしても地方政治は未成熟だという感想を抱いてしまうのだ。

  知る限り、地方自治において知事の権限は絶大だ。その結果、知事の行動に直言する人は次第にいなくなって、知事は「裸の王様」になっていく恐れが強い。

  かつて、参院議長を務めた元埼玉県知事の土屋義彦氏は、父親の名前を使った娘の暴走を防ぐことができず、知事の座を追われた。絶大な力を持った土屋氏に周辺のだれもが「イエスマン」になってしまっていたのである。

  息子を公費で海外に派遣して物議を醸している石原都知事の場合も、どうみても彼を諌める人間はいないようだ。

  ゼネコン汚職で宮城や茨城で業者と癒着した知事が逮捕されて以来、地方政治は浄化されたかと思っていたら、大間違いだった。実態は以前よりひどいのではないかとさえ推測する。

  いまや「地方分権」の時代といわれる。しかし、このような体たらくでは、地方にまかせておいては何をやるかみていられないという声が中央から上がりかねない。

  先日の全国知事会議で安倍首相が苦言を呈したのも、そのはしりかもしれないのだ。地方政治の堕落に、地元の有権者は怒りの目を向けなければならない。